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ベルリン郊外の「アート電力」発電所。アートが問いかける多様なエコロジーのあり方

ベルリン郊外の町・ルッケンヴァルデの元石炭発電所跡にある現代美術施設「E-Werk Luckenwalde」。この場所で開催中のプロジェクト「Power Nights: Being Mothers」は、芸術的実践を通じて「人間にとどまらない文脈」から多様なエコロジーを考察する展覧会だ。本展の様子をレポートする。

文=日比野紗希

E-Werk Luckenwalde Luckenwalde aerial photograph, 2019. Copyright of E-WERK

 政治・経済をはじめ、気候変動へのアクションがますます求められる現代。美術界や哲学などの分野でも、「Anthropocene(人新世)」という概念が頻出し、近年、エコロジーを扱う展覧会も目立つようになった。

 現在、ベルリン郊外の町・ルッケンヴァルデで開催中のプロジェクト「Power Nights: Being Mothers」では、芸術的実践を通じて「人間にとどまらない文脈」から多様なエコロジーを考察する。第58回ヴェネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞をしたリトアニア館の《Sun & Sea》担当キュレーターでもあり、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーのエコロジープロジェクト「General Ecology」創設者でもある注目のキュレーター、ルチア・ピエトロイウスティが手掛けたこの展覧会を紹介したい。

再生エネルギーを発電するアート施設「E-Werk Luckenwalde」

 展覧会を紹介する前に、会場となった「E-Werk Luckenwalde」について触れる。

 ベルリンから南へ40分のところにある「E-Werk Luckenwalde」は1913年に建設され、ベルリンの壁崩壊後の1989年に稼働を終了した元石炭発電所跡にある現代アート施設だ。アーティスト、パブロ・ヴェンデル率いるアート集団Performance Electrics gGmbHとパブロのパートナーであるキュレーター、ヘレン・ターナーは、2年の改修期間を経て、この建物を持続可能なKunststrom(アート電力)発電所として再生させた。

 2019年にオープンしたこの施設は、グリーンエネルギーを供給するとともに、現代アート施設としての機能を持つ。燃料となるのは、森林火災や伐採されたブランデンブルクの木を利用した木材チップ。巨大なエネルギー生成タービンで発電されたグリーンエネルギーは、建物全体や周辺の住民に供給されている。エネルギー生産からのすべての収入は現代アートプログラムに再投資されるという。

E-Werk Luckenwaldeのエントランス 2019. Copyright of E-WERK Luckenwalde and Ben Westoby

 4つのフロアと広い屋外に広がる1万平方メートル以上の敷地には、アートギャラリーと発電施設のほか、アーティストのためのワークショップスペースやスタジオ、野外キッチンが設置されている。

スローキュレーションを用いた展覧会「Being Mothers」

 「E-WERK Luckenwalde」のアーティスティックディレクターを務めるパブロ・ヴェンデルとヘレン・ターナーは、2019年の施設オープンに伴い、実験的・学際的なアートプラットフォーム「Power Nights」を立ち上げた。「Power Nights」は、毎年、外部からキュレーターを招聘し、多彩なプログラムを展開する。初年度はロンドンのパフォーマンスフェスティバル「Block Universe」のキュレーター、カタリーナ・ウォーフとルイーズ・オケリーを招き、展覧会がおこなわれた。コロナによる休止期間を経て、2021年度のキュレーターには、第58回ヴェネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞をしたリトアニア館の《Sun & Sea》の担当キュレーター、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーでエコロジープロジェクト「General Ecology」を立ち上げたルチア・ピエトロイウスティが招聘された。

「Power Nights」のフライヤー

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