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コレクターがつくる新たなコマーシャルギャラリー。若手作家を紹介する「biscuit gallery」が渋谷に開廊

新たなコマーシャルギャラリー「biscuit gallery(ビスケット・ギャラリー)」が3月12日、東京・渋谷にオープンした。オープニングを飾る展覧会「biscuit gallery Opening Exhibition」(3月12日〜3月28日)では、五十嵐大地、岡田佑里奈、清川漠、トモトシ、中澤ふくみ、森井沙季の6名の若手作家が展示を行う。

展示風景より

 新たなコマーシャルギャラリー「biscuit gallery(ビスケット・ギャラリー)」が3月12日、東京・渋谷にオープンした。

 ギャラリーはBunkamura ザ・ミュージアムのある通りのビルに開廊。1〜3階合わせて100平米以上のホワイトキューブを持ち、平面作品からインスタレーションまで幅広く対応できるつくりとなっている。

「biscuit gallery」の外観

 同ギャラリー代表のコバヤシマヒロは現代美術コレクターでもあり、また美術情報のウェブサイト「Bur@rt」を主催して若手の現代美術作家の情報を発信してきた。コバヤシはギャラリーのコンセプトについて、次のように語った。

「若手作家を中心に紹介し、アート作品をコレクションすることの楽しさを広く発信する場にしたいと考えています。作品名を表示するパネルに価格を記載しているのも、まずは作品を買ってもらいたいという思いからです。価格がわかると、その作品を所有することが、より具体的にイメージできるのではないでしょうか」。

 また、コレクター同士が気軽に集まり、情報交換ができるようなギャラリーも目指すという。

「biscuit gallery」のエントランス

 オープニングを飾る展覧会「biscuit gallery Opening Exhibition」(3月12日〜3月28日)では、五十嵐大地、岡田佑里奈、清川漠、トモトシ、中澤ふくみ、森井沙季の6名の若手作家を展示する。

 まず1階では、五十嵐大地と森井沙季の作品を展示。五十嵐は1996年東京生まれで、今年、東京藝術大学油画専攻を卒業する。本展では、照明や配置をつくりこんだ静物を撮影し、その写真の上から油彩で描く作品を発表した。

展示風景より、左から五十嵐大地《Green apple》、《a raw wound》(ともに2021)
展示風景より、五十嵐大地《subterranean butterfly》(2019)

 いっぽうの森井は京都造形芸術大学大学院に在籍中。自身で撮影した写真をコンピューター上で加工し、手ブレのように像が重なっている画像を制作。それをキャンバスにオイルペインティングで描いていく作品を発表した。

展示風景より、左から森井沙季《untitled》(2020)、《equal》(2021)
展示風景より、左から森井沙季《gift-Ⅱ》、《back》(ともに2021)

 両者ともに写真をベースに絵画作品をつくるという共通項を持ちながらも、モチーフやコンセプト、技法によって異なるものを出現させるそれぞれの作風を楽しみたい。

 2階はトモトシと中澤ふくみの映像作品を中心に展示する。トモトシは都市空間に潜在する様々なシステムへの関心をもとに作品を展開してきた。本展では、赤い服を着たトモトシがハチ公像付近に滞在し、観光客がハチ公像と撮影した写真に映り込む行為を記録した一連の作品シリーズ「photobomber_tomotosi」を展示。渋谷にオープンした本ギャラリーにゆかりのある作品として紹介される。

展示風景より、トモトシ「photobomber_tomotosi」シリーズ
展示風景より、トモトシ「photobomber_tomotosi」シリーズ

 中澤は1996年高知県生まれ、京都造形芸術大学美術工芸学科卒業。ストップモーションアニメ映像と、立体を組み合わせた作品を制作している。本展では、半紙に筆で、フランシス・ベーコンやハンス・ベルメールの作品を彷彿とさせる身体をモチーフとした絵を描き、コマ撮りでアニメーションを制作。さらに素材となった絵を固めて立体にすることで、肉体を強く意識させる作品をつくりあげている。

展示風景より、中澤ふくみ《あざとく駆け引く》(2019)
展示風景より、左から中澤ふくみ《「固有の実用」に》、《「あざとく駆け引く」に》(2021)

 3階は岡田佑里奈と清川漠のモノトーンを基調とした作品によって空間がつくられた。岡田は1995年兵庫県生まれ、京都造形芸術大学大学院修士課程卒業。京都を拠点に制作活動を行う。プリントしたモノクロのポートレート写真の表面に特殊な技法でひび割れを起こし、独特の質感をつくりだした作品を展示。写真における視覚情報の価値を問う。

展示風景より、岡田佑里奈《Dream in out013》(2021)
展示風景より、左から岡田佑里奈《Dream in out 015》(2021)、《flower 015》(2021)

 いっぽうの清川は「獏嵌(ばくがん)」という手法によって作品を制作。アクリル板を裏から彫り、その溝にアクリル絵具で彩色していくことで、スピード感のある平面作品をつくりあげている。

展示風景より、左から清川漠《Do52470p》《Un6640》《Do12244》(すべて2021)
展示風景より、左から清川漠《Do6384p》《Un9965》《Do5798p》(すべて2021)

 なお、4月1日からは「biscuit gallery Opening Exhibition II」(〜4月18日)がスタート。こちらでは石井海音、木村翔馬、服部芽生、御村紗也、山田康平、山本捷平の作品が展示される。

 コレクターが自身の持つアーティストとのネットワークを活かしながら若手作家を紹介する「biscuit gallery」。渋谷の新たなアートスポットとして、今後どのような展開を見せるのか注目だ。

編集部

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