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上野の森美術館大賞展の収蔵作品でコロナ時代の日常を見つめる。「なんでもない日ばんざい!」が開催

1983年に制定され、これまでに38回の開催を経てきた公募展「上野の森美術館大賞展」。上野の森美術館に収蔵されたその受賞作のなかから、「なんでもない、どこにでもある日常」をテーマに、この時代だからこそ見てみたい作品をピックアップする「なんでもない日ばんざい!」が開幕した。会期は7月23日〜8月30日。

展示風景より

 1983年に制定され、これまでに38回の開催を経てきた公募展「上野の森美術館大賞展」。この賞をこれまでに受賞し、上野の森美術館に収蔵された作品をピックアップして紹介する展覧会「なんでもない日ばんざい!」が開幕した。会期は7月23日〜8月30日。

 「なんでもない日、ばんざい」という印象的な展覧会タイトルは、新型コロナウイルスの感染拡大によって様々な日常風景が変わってしまった現在だからこそ、「なんでもない、どこにでもある日常」をテーマに、改めて収蔵作品を見つめたいという美術館の思いが込められている。

展示風景より、藤原早苗《ピクニック》(2020)
展示風景より

 展覧会は「日常のなかに」「日常から絵画へ」「動物」「風景」「ひろがる想像」の5つの章で構成される。身近なものに対する視点から始まり、展示終盤に向かってより遠いものへと広がっていくという見せ方が試みられた。

 第1章「日常の中に」では、家や室内、身の回りの風景、すぐそばの親しい人などを描いた作品が並ぶ。展覧会テーマで示された「なんでもない日」が、一番わかりやすく感じられる作品がそろう。

展示風景より、石村実《静物》(1983)
展示風景より

 第2章「日常から絵画へ」では、身近な日常に題材を得ながらも、古今東西の様々な絵画の手法を参照しながら、表現をアップデートした作品を紹介する。絵画を通じて、日常の異なる姿を描き出す作品が集まった。

展示風景より、春日佳歩《惨くて、美味しくて、》(2020)
展示風景より

 第3章「動物」は、長い歴史のなかで題材にされ、また日常のパートナーとして愛されてきた動物をテーマにする。動物を描くことに仮託した、人の思いや感情が表現されている。

展示風景より、岩崎奈美《ぬくもり》(2008)

 第4章「風景」は、第1章で取り扱った風景よりもさらに広い、都市や自然のなかの風景などを取り扱う。日々を過ごすなかで通り過ぎたり、見過ごしたりしていた風景が、絵画表現によって新たな意味を付与されている。

展示風景より、向田友美《操車場Ⅰ》(1988)
展示風景より

 最後の第5章「ひろがる想像」では、日常の枠のなかで想像を膨らませ、物理的な成約を超えて描かれた作品を扱う。目の前にある現実を超えていく、絵画だからこそつくりだせる世界を堪能してほしい。

展示風景より
展示風景より

 新型コロナウイルスの影響により、海外から作品を集める大規模な企画展の開催が難しくなっている現在、改めて美術館の収蔵品に注目が集まっている。過去の公募展における優秀作品群をとらえ直し、「日常」という視座で改めてキュレーションした「なんでもない日ばんざい!」の試みに注目したい。

編集部

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