「石のまち」として知られる新潟・糸魚川市が、石を素材に「石のかお」をつくって応募するコンテスト「石のかおコンテスト2021」を開催している。
「石のかおコンテスト2021」は、全国どこにでもある石を素材に「石のかお」をつくり、写真をSNSで投稿するだけで応募が可能。
今回の開催にあわせて、平山昌尚、片岡メリヤス、とんぼせんせい、田中偉一郎の4名のアーティストが石を素材に作品を制作。糸魚川の石を使って、様々な「顔」をつくりあげた。
画用紙にボールペンとマーカーといった身近な画材を用いて、記号的なドローイングを制作してきた平山。4つの石だけをシンプルに使いながらも、それぞれの石の質感や触り心地を想像したくなる作品《9103》をつくりあげた。
作品名はこれまでの作品に番号を振ってきたその並びの数字だ。平山は「この石はいつ頃できたものなのだろう? などと思いを巡らせながら石ころを積みました」とコメントしている。これらの石は撮影後にバラされ、糸魚川にまた帰っていくという。
ぬいぐるみや、動いたり光ったりするおもちゃなどを制作してきた片岡メリヤスは、「石にとっても人間にとっても楽しい時間になるといいな」という思いから石と対話。「耳になりたい? 鼻になりたい?」と話しながら、人懐っこい表情の作品《ジョン》をつくりあげた。
片岡は本作を見る人々に次のように問いかけている。「『そしていま、遠い場所から集まって、たまたま出会ったこの石たちと共同作業で顔をつくるに至りました。長い人生でこんな出来事ははじめてで興奮がおさえられません』。さて、この台詞を言っているのはこの顔の中のどの石でしょう?」。
「三本の線を引くだけでどこにでも現れる」をコンセプトに活動するアーティストのとんぼせんせい。作品《Stone smile》にも、特徴的な「三本の線」の顔が現れた。とんぼせんせいは本作を、新型コロナウイルスの影響によって保育園が休園になった際、近所の人のいない寺で息子と制作したという。
「息子にサンプルの石を見せて『これぐらいの石を持ってきて~』とお願いすると、喜んで石を集めてくれました。絵具がなくても、石に直接絵を描かなくても、石自体が画材になるので、それで顔をつくることができます。ぜひ、みなさんも石で顔を描いてみてはいかがでしょうか?」。
美術館やギャラリーだけでなく、国内外の様々なメディアに神出鬼没中の美術家の田中偉一郎。田中は多くの石を使って立体の顔《バランシング・ゴッド(糸魚川の神)》をつくりあげた。
田中は「作品についてのコメントはとくにない」としながらも、制作中に頭をめぐったキーワードを次のように並べた。「石/石像/地蔵/ロック・バランシング/バランシング・ロック/14才(ハイロウズ)/アルチンボルド/マニエリスム/マグリット/八百万の神/尿路結石/ノンパワーストーン(田中偉一郎2019)/驚異の部屋/つげ義春/顔/阿修羅/へん顔/分解/イサム・ノグチ/ゴッホ/ピカソ/キュビズム/マスク/ギャング/忍者/不要不急/不朽/ヒジャーブ/通学帽子/生意気/無表情/再生/蘇生」。
糸魚川市は国石「ヒスイ」の産地として知られるほか、奴奈川姫の伝説や、ユネスコ世界ジオパーク認定の豊かな自然、その自然が織りなす食や温泉などを有する「石のまち」だ。石から広がる独自の価値を、市民と行政が一体となって「石のまち」の魅力を全国に発信してきた。
2021年春からは、糸魚川市が市内の小学校などで石のかおをつくるワークショップを開催。子供も大人も石に触れ、色やかたちを観察しながら個性的な作品を制作。普段は何気なく見過ごしている石が、アート作品になるという創造性を刺激する体験として人気を博した。
糸魚川市はこのワークショップを発展させ、より多くの人々に石を使って想像してもらうために、全国へと対象を拡大するかたちで「石のかおコンテスト2021」を開催することとなった。コンテストにはアートユニット・tupera tuperaをはじめとする審査員を迎え、ユニークな作品を発表した10名には「ヒスイ」の原石をプレゼントする。
石というどこにでもある素材を使いながらも、自由な発想でクリエイティビティを発揮したアーティストたち。手に入りやすい素材をつかって、誰もが自分の自由な発想で「顔」をつくれる「石のかおコンテスト2021」に、ぜひ応募してみてはいかがだろう。