絵と言葉による作品を募集。「NOBUKO 基金」による「絵と言葉のチカラ展」の公募が開始

絵(平面作品)と言葉が融合して、ひとつの世界を表わす作品を募る公募展「絵と言葉のチカラ展」の募集が始まった。応募締切は12月26日まで。

「絵と言葉のチカラ展」のロゴマーク

 「NOBUKO 基金ART」による公募展「絵と言葉のチカラ」展。その第1回の募集が開始された。応募締切は12月26日まで。

 「NOBUKO 基金」(公益財団法人パブリックリソース財団内に設置)は2019年に逝去した実業家・河合伸子の意志を受け、困難を抱える家庭に育つ子供たちを支援することを目的に設立された。

河合伸子

 「絵と言葉のチカラ」展は、この「NOBUKO 基金」と同一主旨のもと、異分野の事業として今年の春に設置された「NOBUKO 基金ART」の事業。アートが人々の心を潤し、活力を与えるものだという信念のもと、心が豊かになる作品が1点でも多く世に発信されることを願い発足した。

 同展は美術界のスターを輩出することが目的ではない。日本画と洋画、伝統的な美術と現代美術、新人とベテランなど、様々な区分けが存在している美術の世界の現況を鑑みて、こうした既存の壁を取りはらい、もっとシンプルに根源的に、絵のチカラ、言葉のチカラによって人々の心の奥底に響かせる表現を求めている。学生からプロのアーティストまで幅広い対象から作品を募集し、新しい表現ジャンルの創出を目指す。

[参考作品]審査員・齋正機による作品例《家ノ灯リニ夜電車走ル》(2013) 72.7×91.0cm 紙本彩色
さっき注射したためだろうか。とっても楽になった。
「もうゼーゼーしなくぐなったね。もう苦しぐないね。」
と先生は聴診器をあてながら言う。
「うん苦しぐない。」
「念のため、しばらくベッドで休んでいぎなね。」
小学校低学年ぐらいまで夜の病院に来ることが何度かあった。
注射を打ってもらうと発作が嘘のように治まるのである。
病院の外に出る頃は、車や人の気配が消えて真っ暗。
「家まですぐだがらなあ。」と心配そうに母は話し掛けたが、
来る時と違って全く僕は元気だ。
母の自転車の後ろでぼんやり遠くを眺める。
漆黒の闇にオレンジ色や薄黄色の家の灯がポツンポツンと見えてきた。
(1、2、3…7つ、少ねえなあ…。遠いべなあ…。どのぐらいがなあ…?)
少し肌寒い風の中、数人しか乗っていない電車が通り過ぎて行く。

──齋正機による作品例《家ノ灯リニ夜電車走ル》(2013)のエッセイ

 応募はすべてウェブ上で受付。募集するのは、絵(平面作品)と言葉が融合して、ひとつの世界を表わす未発表の作品。絵と言葉が同一画面上にある必要はなく、また未発表であれば制作年は問わない。言葉はエッセイ、詩、俳句、短歌、物語など400 文字以内であればジャンルは不問。 また、絵と言葉の著者は異なっていても良い。グランプリは賞金50万円、副賞として個展開催の権利が与えられ、そのほかの受賞者にも賞金がある。出品料は1点5000円、2点8000円、中高生の場合はそれぞれ半額となる。

 第1回の審査員は、日本画家で本展シンボルアーティストの齋正機、評論家の山下裕二、『芸術新潮』編集長の吉田晃子。1次審査、2次審査を経て決まった入賞作品は、2022年4月13日〜19日に松坂屋上野店の本館7階美術画廊で展示される。

左から齋正機、山下裕二、吉田晃子

 「あなたも、つなげてみませんか?」という同展のキャッチコピーにあるように、絵と言葉、そして人と人がつながることで予期せぬ化学反応が起こり、新しい可能性や視点が発見できそうな「絵と言葉のチカラ」展。親しい友人や知人、家族、あるいは恋人とコラボレーションを楽しむのも良いだろう。記念すべき第1回目の募集に、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。

編集部

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