NEWS / PROMOTION - 2019.5.5

工場とアーティストが出会うとき。愛媛県東部で初のアートフェスティバル「えひめさんさん物語」が開幕

愛媛県東部に位置する新居浜市、西条市、四国中央市を舞台に、5月から11月にかけて開催されるアートフェスティバル「えひめさんさん物語」が開幕した。地域の資産とアート、そしてアクティビティを融合させたこのイベントの見どころとは?

住友共同電力新居浜西火力発電所での《工場のおしばい》上映風景

 「えひめさんさん物語」は、愛媛県東部初の地域振興イベント。会場となるのは新居浜市、西条市、四国中央市の3市だ。西日本最高峰の石鎚山、赤石山系、赤星山等の山々が連なるこの地域は、豊かな自然を活かし全国有数の「ものづくり産業」の一大集積地として発展してきた。

 この地域の産業資産を、アートやアクティビティと融合させたのが「えひめさんさん物語」だ。会期は5月から11月にかけての約半年間。5月、7月、8月、9月、10月、11月を6つの物語に見立て、それぞれの月で異なるプログラムを展開していく。

 そのこけら落としとなる5月のテーマは「ものづくり物語 さんさん都工場芸術祭」。メインプログラムとなるのは、アーティスト・高橋匡太と脚本家・野上絹代がコラボレーションした3日間限定の《工場のおしばい》だ。

高橋匡太と野上絹代による住友共同電力新居浜西火力発電所での《工場のおしばい》上映風景

 光と映像によるパブリックプロジェクションやインスタレーションを多く手がける高橋。昨年クリスマスには、新宿の歌舞伎町を舞台に、建物同士が会話を交わすという《歌舞伎町の聖夜》を発表し、注目を集めた。

 今回上映された《工場のおしばい》では、3つの市にある今治造船西条工場、住友共同電力新居浜西火力発電所、大王製紙三島工場が作品の舞台。それぞれの巨大工場にあるクレーンや煙突にプロジェクションが施され、異なる物語が展開された。

 場所探しを含めて1年がかりで完成したという今回の作品。高橋は「ものづくりに縁のない人にその実態を知ってもらいたいと思いました。また工場で働いている人やその家族にも楽しんでほしいですね」と語った。

高橋匡太と野上絹代による住友共同電力新居浜西火力発電所での《工場のおしばい》上映風景

 「ものづくり物語 さんさん都工場芸術祭」では、もうひとつのメインプログラムがある。それが、「アーティスト in ファクトリー」だ。このプログラムでは、普段は見ることができないものづくりの工場12ヶ所にアーティストたちが滞在。それぞれの視点で工場とコラボレーションした作品を生み出した。

 例えばステンレス板金加工に特化した大伸ステンレスでは、松山在住の牛島光太郎が「海」や「船」といった物事にまつわる記憶について、11人の社員にインタビューを実施。《海の街》として工場の内部を「海」に見立て、インタビューで語られた内容を、ステンレスで立体化して展示した。床だけでなく天井からも吊るされた様々なオブジェ。鑑賞者は懐中電灯でそれらを照らすことで、そこには思いがけない光景が生まれる。また社員が自主的につくったという巨大な船がレーンから吊るされ、会場内で存在感を示していた。

牛島光太郎《海の街》の一部
牛島光太郎《海の街》の一部

 大型プラント建設などを請け負う大石工作所では、彫刻家・柳原絵夢が《Oishi Park[Land of Dreams]》を制作。通常業務で使用されている材料や廃材を利用し、工場をイメージした「遊園地」を生み出した。大石工作所の技術を活かした、大人も子供も楽しめるいくつもの仕掛け。去年の10月に行われた本フェスティバルのプレイベントで展示されたものもあわせ、巨大工場がテーマパークのような遊び場へと変容した。

柳原絵夢《Oishi Park[Land of Dreams]》の一部
柳原絵夢《Oishi Park[Land of Dreams]》の一部

 明治元年に創業した「別子飴本舗」。その7色の包装紙を使ったのが、松岡美江だ。別子飴は、住友財閥発展の礎となった別子銅山の名前を広めるため、その名前を冠した乳化飴製品。各地域に足を運び、その場所が持つ記憶と向き合った作品を手がけてきた松岡は今回、150年の歴史を持つ別子飴本舗とコラボレーションするにあたり、別子飴8万3000個分の包装紙でインスタレーション《タイムマンプ》を生み出した。新居浜を代表するモチーフが描かれた包装紙は80年間変わらないもの。床から天井までを覆った「包装紙のトンネル」は、別子銅山の坑道へのオマージュとなっている。

《タイムマンプ》の展示風景
《タイムマンプ》の展示風景

 アーティスト単体ではなく、それぞれの工場で働く人々の意見を尊重し、共に作品をつくりあげた今回の「ものづくり物語 さんさん都工場芸術祭」。アーティストが現場に入れることで、職人たちは日々の業務では得られない刺激を受けていたようだ。また工場を開放することは、ものづくりが担う重要性をアピールする場ともなる。

 賑わいが見られた「ものづくり物語 さんさん都工場芸術祭」を受け、7月以降の各プログラムがどのように展開されていくのか、注目したい。