今回、日本で大々的に紹介される「ビュールレ・コレクション」は、ドイツに生まれスイスで活動した実業家、エミール=ゲオルグ・ビュールレ(1890〜1956)が、1937年から56年にかけて蒐集したもの。
このコレクションは、これまでヨーロッパ以外にまとまって貸し出されたことはほとんどなく、過去に日本で紹介されたのは、ビュールレの生誕100年として90年から91年にかけてワシントン、モントリオール、横浜、ロンドンで開催された世界巡回展の一度のみだった。
本展は、ビュールレ・コレクションを展示する美術館(ビュールレの邸宅別棟)が2015年に閉館したのに伴い実現したもの。同コレクションは、2020年にデイヴィッド・チッパーフィールド設計のチューリッヒ美術館に管理が移ることが決定しているため、このような機会は二度とないとも言われている。
記者会見に登壇したE.G.ビュールレ・コレクション財団のルーカス・グルーア館長は「私たちとしても、財団の展示が国立新美術館で再現されることを嬉しく思っています」とコメントを残している。
出品されるコレクションには、ピエール=オーギュスト・ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いエレーヌ)》(1880)や、ポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》(1888/90頃)、フィンセント・ファン・ゴッホの《種まく人》(1888)などの傑作が含まれており、本展では、印象派・ポスト印象派の代表作約60点が出揃う。
展覧会は「肖像画」「ヨーロッパの都市」「19世紀のフランス絵画」「印象派の風景ーマネ、モネ、ピサロ、シスレー」「印象派の人物ードガとルノワール」「ポール・セザンヌ」「フィンセント・ファン・ゴッホ」「20世紀初頭のフランス絵画」「モダン・アート」の9章で構成。
ポール・ゴーギャンの《贈りもの》(1902)をはじめ、ルノワールの《泉》(1906)、パブロ・ピカソの《花とレモンのある静物》(1941)など、出品作の約半数が日本初公開になる。
なお、こちらも日本初公開となるクロード・モネの横幅4メートルにも及ぶ大作《睡蓮の池、緑の反映》(1920/1926頃)は特別出品として展示。モネの死後、アトリエに保管されていたという同作は、ビュールレが購入したモネの3つの睡蓮のうち、唯一手元に残した作品だという。1952年以来、初めてスイス国外に持ち出されることになる。
世界有数の個人コレクション。その二度とないかもしれない来日の機会に大きな注目が集まる。