ドイツを代表する現代美術家、ゲルハルト・リヒターの作品を公共機関に恒久的に提供するために設立されたゲルハルト・リヒター財団が、ベルリンのアルテ・ナショナルギャラリー(旧国立美術館)に100点以上の作品を永久貸与することが発表された。
中心となる作品は、4点構成の「ビルケナウ」シリーズ(2014)。同シリーズは、1944年にアウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅収容所の囚人によって密かに撮影された4枚の写真をもとに制作されたもの。これまでドレスデン、プラハ、モスクワ、ニューヨークの美術館で展示されてきた同シリーズは現在、アルテ・ナショナルギャラリーで開催中の「Reflections on Painting」(〜10月3日)展にて4枚の写真原作と鏡とともに展示されている。
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今回の貸与についてゲルハルト・リヒターは、「財団を設立するきっかけとなったのは、市場に出したくなかったビルケナウの4枚の絵画だった。これらの作品がベルリンに来ることを嬉しく思う」とコメントしている。
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ほかの作品には、リヒターにとって個人的な作品《Besetztes Haus》(1989)やガラスや鏡の作品《Spiegel, Grau》(1991)、《6 Standing Discs》(2002/2011)、そして近年の抽象画シリーズ「4,900 colors」(2007)「Strip」(2013)なども含まれている。
同館を含むドイツ国内の27の施設を管理するプロイセン文化遺産財団の会長であるヘルマン・パルツィンガーは「ゲルハルト・リヒターの作品は、ドイツの歴史なしには考えられない。私たちの多くにとって、彼の絵画は20世紀の激動を把握する手段となっている」とコメント。
なお、貸与作品の主要な部分は2023年からノイエ・ナショナルギャラリーで展示。その後、27年に開館予定の「20世紀美術館」で常設展示予定となっている。