当初、今年5月23日から11月29日まで開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で21年に延期された第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展。その日本館では、明治大学准教授の門脇耕三がキュレーションを務め、建築家の長坂常、岩瀬諒子、木内俊克、砂山太一、元木大輔やグラフィックデザイナーの長嶋りかこなどが参加を予定している。
この日本館に参加するクリエイターたちが、国際建築展の延期によって生じた時間を利用し、日本館展示とは別に、新たな関連プロジェクトをスタート。そのプロジェクトを中心とした1年間の活動予算を確保するため、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」でキャンペーンを立ち上げた。
21年の日本館の展示では、ごく普通の日本の木造住宅1棟をヴェネチアまで移動させて展示。輸送にあたり住宅は解体され、いったん「モノ化」される。そして現地ではその材料や部材を展示するとともに、住宅の象徴的な部分を組み立てて見せるという。
今回の新しいプロジェクトでは、展示終了後に展示物を構成していた住宅の木材などのマテリアルをアップサイクルし、クラウドファンディングを支援した人々にリターンとして返すことを計画。クラウドファンディングの目標金額は300万円で、リターンとしては、3500円のオリジナルてぬぐい、2万円の展覧会カタログと展示素材アップサイクル品セットから、15万円の国際建築展内覧会ペア招待券、200万円の長坂常による国際建築展特別版のテーブルまで、合計16種類のグッズやプロダクトを選ぶことができる。
また、目標金額に満たない場合や、コロナの影響で国際建築展がさらに延期や中止となる場合も、計画を実行し、てぬぐいやオリジナルプロダクトを届けるとともに、集まった資金はヴェネチア近くの移民コミュニティや社会的なプログラムをもった建物をつくる計画など展示終了後の活動にも充てるという。
今回のクラウドファンディングについて門脇はプロジェクトの紹介文で、「その裏には、わざわざヴェネチアまで持っていったものを、ゴミとして現地に捨てたくはないという素朴な思いもあります」とし、「紆余曲折が続くプロジェクトですが、困難を好機に変える姿勢をこれまで貫いてきました。クラウドファンディングへの挑戦も何度も議論を重ねて決意したことですが、みなさまからの応援が一番の励みになります」とコメントしている。