気候変動とコロナ禍の現代、アートはエコロジーをどう扱うか? 『美術手帖』6月号は「新しいエコロジー」特集
『美術手帖』2020年6月号は「新しいエコロジー」特集。気候変動の問題に取り組むオラファー・エリアソンや、「デジタルネイチャー」を提唱する落合陽一、動植物などを作品に取り込んできたピエール・ユイグといった国際的に活躍するアーティストが登場。新しい自然観や環境観を提示する、現代美術の最新動向に迫る。
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5月7日発売の 『美術手帖』2020年6月号は、「新しいエコロジー」を特集する。
地球温暖化や異常気象、震災や台風、そして感染症による災害が、世界中の人々の暮らしに大きな影響を与えている現代。グレタ・トゥーンベリの訴えが国境を越えて大きな共感を呼ぶなど、気候変動は国際社会において喫緊の課題となっている。こういった環境に関わる問題について、アーティストたちはどのような表現で応答しているのだろうか。人間が自然を利用し搾取する近代的・資本主義的なあり方を見直し、新しい「環境観」「自然観」「生命観」を提示するアートの動向を紹介する。
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表紙と10ページにわたる巻頭ヴィジュアルは、東京都現代美術館で開催予定の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展で撮影。モデル・女優として注目を集めるモトーラ世理奈が登場する、スペシャル・フォトセッションが行われた。
世界各地で大規模個展を開催するオラファー・エリアソンは、太陽光や滝、虹といった自然現象を再現するインスタレーション作品で知られる。本誌のためのインタビューでは、気候変動を初めて中心テーマに据えた今回の個展に込めた思いや、温暖化や新型コロナウイルスの渦中にある現代社会における芸術の可能性について語られた。
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メディア・アーティストの落合陽一は、「デジタルネイチャー」という独自の自然観を提唱する。人と機械、物質世界とヴァーチャル世界のあいだにある境界を再編し、新たな選択肢を生み出すような未来志向の実践について、近年の作品を例に解説する。
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国際的なアートシーンにおいて大きな影響力を持つアーティストのピエール・ユイグも、拠点とするチリからオンラインで取材に応じた。植物や動物、細胞、インフルエンザウイルス、AI、科学技術システムまでをも作品に取り込むユイグは、人間と自然の分離を超えた「共進化」の重要性を説く。これまでの作品や、アーティスティック・ディレクターを務めた「岡山芸術交流2019」での試みを踏まえ、多種多様な生物/無生物と協働するアートについて語った。
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また、キュレーターや哲学者、アーティストなど多彩な顔ぶれによる、アートとエコロジーをテーマにした論考も多数掲載される。
東京都現代美術館参事を務めるキュレーターの長谷川祐子は、アマゾンでのフィールドワークや専門家への取材をとおしてリサーチを続けてきた、エコロジカルな領域におけるアートについて論文を寄稿する。
哲学者・科学人類学者として世界の思想哲学をリードするブリュノ・ラトゥールの翻訳論考、環境哲学者ティモシー・モートンの国内への紹介者としても知られる哲学者の篠原雅武の論考、著書『現代美術史』(中公新書)で注目を集める山本浩貴による寄稿「エコロジーの美術史」も掲載。
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さらに「ノンヒューマン:非人間中心主義とアート」と題するパートでは、「海洋」「地層」「植物」「動物」というテーマごとに、ノンヒューマン(人間ならざるもの)を扱うアートの取り組みを紹介する。アーティスト藤浩志と芸術人類学者・石倉敏明の対談や、日本でも著書『植物は〈知性〉をもっている』(NHK出版)が大きな反響を呼んだ、植物学の世界的権威であるステファノ・マンクーゾ、2019年に第58回ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したリトアニア館のキュレーター、ルチア・ピエトロイウスティ、ファッションにおける「ポスト人間中心」を掲げるスペキュラティヴデザイナー・川崎和也など、多分野における重要人物の思考と実践に迫る。
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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにともない、ますます見直しが迫られる自然と人間の関係性。本特集ではアートをとおして、来たるべきエコロジーの可能性を模索する。
また、第2特集「アーティストと香港デモ」では、チョウ・チュン・ファイ、クララ&ガムのインタビューに加え、「キーワードで読み解く キュンチョメが見た『香港デモ』」を掲載する。
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