政府の補正予算案、文化関係で注目すべきポイントとは?

4月7日に閣議決定された2020年度補正予算政府案。そのうち、文化芸術関係ではどのような項目・予算が計上されているのかをチェックする。

文化庁

 4月7日に閣議決定され、今月中の可決を目指す緊急経済対策を盛り込んだ補正予算案。そのうち、文化関係で注目すべきポイントはどこなのか?

ふたつの給付金に「文化芸術の特殊性に考慮」

 文化に特化したものではないが、もっとも大きな注目を集めているのが、分野を横断した支援策である2.3兆円の「持続化給付金」と、4兆円の「生活支援臨時給付金」だろう。

 前者は中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を給付し、後者は制限付きで1世帯当たり30万円を給付するというもの。すでにメディアでも大きく報道されているこの給付金だが、今回の緊急経済対策ではこれらの給付金について「文化芸術をはじめとする幅広い業態の特殊性も踏まえ、申請者の事務負担を考慮して、電子申請を原則とするなど、可能な限り簡便な手続とし、申請から給付までの期間を極力短くする」という文章が追加された。手続きの複雑さなどが取り沙汰されるなか、はたしてこの文言が具体的にどのような成果として現れるのかは注視したい。

文化庁は61億円を計上。施設の感染防止に21億円

 長官メッセージで批判を浴びた文化庁だが、補正予算案では61億円規模の支援事業を行う。

 文化庁は、支援のフェーズを「自粛要請期」「再開期」「反転攻勢期」の3つに分類。補正予算案でもっとも大きな予算を占めるのが「再開期」にあたる「文化施設の再開における感染症対策支援」 の21億円だ。

 今後、美術館・博物館などが再開されても、当面は来館者の発熱確認などのシステムが必須となるだろう。そうしたなか、21億円のうち17.4億円は、感染予防のための施設整備を補助。400万円を上限に、赤外線カメラ装置や空調換気、消毒液などの衛生面の予防対策、公演再開に伴う環境整備のための経費を支援する。

 また、施設再開後もいわゆる「3密」を避ける環境整備のため、残る3億円で美術館・博物館における時間制来館者システムを導入する費用を、300万円を上限に支援する。

デジタルコンテンツ整備に14億円

  同じく「再開期」の支援策として、「最先端技術を活用した鑑賞環境の改善と文化施設の収益力強化」に14億円を計上する。多くの施設が休館となり、外出自粛が続くなか、需要の高まりを見せるデジタルコンテンツ。しかしその整備には多額の費用が必要だ。「最先端技術を活用した鑑賞環境の改善と文化施設の収益力強化」は、その課題解決を促進するものとして位置づけられており、文化庁はその狙いを次のようにしている。

 「収益構造の改革として、実際の鑑賞のみならず、8K等の高精細コンテンツの配信等を最大限活用し、各分野の特性を活かした新しい鑑賞モデルの実践や、博物館においても、博物館の持続可能な博物館運営に資する取組として、高精細コンテンツを活用した展覧会等のモデル事業を実践することにより、国内の新たな鑑賞者の拡充や海外需要を引き寄せることで、収益構造の抜本的な改革、舞台芸術団体や劇場、博物館の自律的な運営を目指す」。

 内訳としては、14億円のうち9.2億円は動画配信やオンラインコンテンツ強化に(うち舞台芸術は7.2億円、博物館は2億円)、5億円は「博物館×アニメ」や「博物館×ゲーム」といったエンタメコンテンツと博物館の連携モデル構築事業として計上されている。

巡回公演などに計26億円

「反転攻勢期」では、ふたつの事業に13億円ずつを計上した。ひとつは「生徒やアマチュアを含む地域の文化芸術関係団体・芸術家によるアートキャラバン」、もうひとつは「子供たちの文化芸術体験の創出事業」だ。

 前者では、地域の文化関係団体・芸術家・アマチュアを含む芸術団体、あるいはフリーランスなどによる公演や展示・展覧会等を25の地域で実施。1地域あたり5150万円を助成する。

 後者においては、学校の一斉休業で中止された児童劇等の鑑賞教室について、巡回特別公演等を実施。750公演(学校鑑賞教室中止件数504件+普及促進246件)によって、「子供たちが質の高い文化芸術に触れる機会を創出し、冷え込んだ文化芸術への関心を取り戻す」としている。

経産省との連携事業で878億円

 今回の補正予算案では、経済産業省と連携した新規事業が新設されている。それが「コンテンツグローバル需要創出促進事業」だ。

 これは、音楽や演劇等の国内公演やその公演を収録した動画を全部または一部、海外向けにデジタル配信するということを条件に、事業者を補助するというもの。新型コロナウイルスによって影響を受けた事業者を支援できるよう、もともとあった枠組みを調整したものだ。

 政府による支援に対しては、すで日本文化政策学会有志らがフリーランス事業者への報酬の一部を補助金から支払うことなどを盛り込んだ緊急提言をまとめている。また、民間でもクラウドファンディングなどを通じた支援の輪が広まりつつある。

 こうしたなか、今回の補正予算案にある61億円と878億円が、どれほどの実効性を持つのか。その効果は注視すべきところだ。

 なお、海外ではアメリカの芸術基金が非営利団体向けに83億円の支援を発表。イギリスではアーツカウンシルが216億円の緊急支出を決め、フランスでは文化省が26億円の拠出を決定している。

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