2020.1.9

ダムタイプは進化し続ける。18年ぶりの新作パフォーマンスは《2020》

日本を代表するアーティスト・コレクティブ「ダムタイプ」。その約18年ぶりとなる新作パフォーマンス《2020》が今年3月、ロームシアター京都で2日間にわたって上演される。これを前に行われた初の通し稽古で、ダムタイプメンバーが語ったこととは?

 

ダムタイプ《2020》より(通し稽古から抜粋) 撮影=井上嘉和
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 ダムタイプは変わり続けている──この作品を見たら、誰もがそう思うだろう。ダムタイプの約18年ぶりとなる新作パフォーマンス《2020》が、今年3月28日と29日、ロームシアター京都にて上演される(※3月23日追記:本公演は公演中止が決定した)。

 ダムタイプの結成は1984年。当時、京都市立芸術大学の学生だった古橋悌二や高谷史郎を中心に活動をスタートさせ、これまで複数のアーティストが参加し、集団によるコラボレーションで作品を生み出し続けてきた。

 《pH》(1990初演)をはじめ、《S/N》(1994)、《OR》(1997)、《memorandum》(1999)、《Voyage》(2002)など、伝説的な作品の数々により、日本のみならず世界でも評価が高いダムタイプ。その新作パフォーマンスが《2020》(2020)だ。

 本作に参加しているのは、高谷史郎をはじめ、山中透、池田亮司、古舘健、原摩利彦ら18名(1月8日時点)。このなかには、オーディションによって選ばれた10代のダンサー・アオイヤマダも含まれている。

 1月8日にロームシアター京都で行われた初の通し稽古では、舞台の中心に開けられた大きな四角い穴、女性パフォーマーたちが発する言葉、ナット・キング・コールが歌う『L-O-V-E』にあわせて現れる文字や文章など、いわゆる「ダムタイプ」から想像するものとは異なる景色があった。

ダムタイプ《2020》より(通し稽古から抜粋) 撮影=井上嘉和

 まず気になるのは本作のタイトルだ。2020年に発表する作品を《2020》とすることにはどのような意図があるのか? 高谷はこう語る。

 「ダムタイプとして18年ぶりにつくるとき、どんなキーになる言葉があるのかを探すところから始まりました。《2020》というタイトルはたんなる今年の数字なんだけども、『2020』と数字が揃っていると、急に何か意味があるようにも思えてくる。逆に、東京オリンピックがあるけども、たんなる『2020年』なんだと言うこともできる。そういうところから、《2020》っておもしろいんじゃないかと」。

 そこには「いまの社会を表す何かになればいい」という思いがあるとも話す。「答えではなく、質問の集合みたいなものができるような気がしています」。

 いっぽう、パフォーマーとして舞台に立つ砂山典子とアオイヤマダの言葉にも注目したい。

 「女性パフォーマーしか出ていないし、ダムタイプなのにすごく喋ってると思うんです。個人のある種の叫びみたいなものをどう伝えるか切磋琢磨している」(砂山)。

 「いまの世代はSNSなど自分たちがつくったものから抜け出せなくなったり、でも楽しんだりしています。だから踊っていて、舞台に穴があることがいまっぽい。わかる気がしました。共感できる存在だなと」(アオイ)。

ダムタイプ《2020》より(通し稽古から抜粋) 撮影=井上嘉和

 ダムタイプは2019年、東京都現代美術館で大規模個展「アクション+リフレクション」(〜2月16日)をスタートさせた。また18年には、ポンピドゥー・センター・メッスでも個展「ACTIONS+REFLEXTIONS」を行っている。

 ふたつの大きな展覧会を経ての公演となる《2020》。高谷は最後のシーンについて「ダムタイプがこれまでつくってきたものを内省するようなシーンにしたいと思っていました」としながらも、これまでとは異なるつくりかたを探ったという。

 「新しいつくりかたをしたいと思ってオーディションをしてみました。インスタレーションをつくるときでも、古舘くんや原くんのような、感覚が違う世代と一緒に仕事することはおもしろいと思った。なので、さらに下の世代と仕事ができれば、アーカイブのような作品ではなく、昔の作品を踏み台にして、全然違うものが出てきたらおもしろいなと。それはメッスのときから考えていました。それ以前、14年に東京都現代美術館で《MEMORANDUM OR VOYAGE》をつくったときも、違うつくりかたができたので、こういう感覚で次に開いていければいいなと思ったんです。『ダムタイプとはこういうものである』というのではなく、もっとボヤッとしたものに広がっていけばいいなと。そういう感じで今回もつくっています」。

 「いつもアドヴァンストなものをやっていたい」と語る高谷。そこには前衛ではなく、現在の状況を照射するような作品をつくりたいという意思が込められている。新たなメンバーを加え、またひとつ歩を進めたダムタイプ。その成果となる《2020》をぜひ目撃してほしい。