1898年に設立されたノースイースタン大学は、ボストンにある私立大学でハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などに隣接している。インターンシップを通じて実践的な経験を積む「コーオプ(co-op)」プログラムの充実で知られており、U.S.ニュースが毎年発表する国内大学ランキングの最新版では、上位にあたる40位につけている。
今回同校が設立を発表した「クリエイティブ・プラクティス・リーダーシップ」コースは、アーツ・メディア・デザイン学部に属する。修了時に理学修士(Master of Science)が付与されるのが特徴だ。
ノースイースタン大学は、もともと音楽学部が強く、音楽業界で活躍するための見識とトレーニングを積む教育における実績がある。本プログラムは、そのモデルをベースに、学生の希望に応じ、音楽だけではなく、アート、演劇、デザイン、メディア、コミュニケーションと多岐にわたる分野をカバーできる構成になっている。
コースの目的は、急速に変化するクリエイティブ産業の最前線をリードする人材の育成。学生はプログラムを通じ、「クリエイティブの実践現場」「文化関連の起業」「アートとエンターテイメントにおけるイノベーション」に貢献するための、新しいアプローチを探求し、リーダーとして活躍するために必要なスキルと知識を獲得していく。
文化に関わる施設や事業でリーダーシップを発揮するには、クリティカルかつ理論的な思考に加えて、今後はテクノロジーを活用した物事への対応能力も求められるようになる。このコースは、それを見越して、テクノロジーをベースにした問題解決能力の習得も目指しているのが最大の特徴だ。
例えば美術業界では、すでにAIを活用し、既存の美術史観に頼らない新たなコンテクストの発掘や、ビジター・エンゲージメントの改善が実践されている。美術館などの文化施設が社会の変化についていくためには、いままでの慣習の見直し、これまでになかった機会や問題への対応、新たなオーディエンスとの関係構築などを迫られることになる。その際に活用できるツールおよびフレームワークとして、本プログラムではテクノロジーを学んでいくという。
学部長のエリザベス・ハドソンは「このプログラムは本校が誇る、起業精神を支えるネットワークと、クリエイティブ産業をリードする新たな道筋の橋渡しとなる」と語っており、学生が新たなビジネスモデルを打ち立てていくことが期待されているようだ。
コース概要には「クリエイティブな活動に携わることは、世界規模でのサステナビリティ、人類の存続、意義のある人生経験などに、多大な影響を及ぼす」と謳われている。バランスのとれた倫理的・社会的感覚も、リーダーには必要な資質として、このプログラムでは想定されている。
アメリカの主要美術館を例に見ると、館長のポジションは現状、美術史の学位を持つ人々でほぼ占められている。はたして「クリエイティブ・プラクティス・リーダーシップ」のようなプログラムを修めた人物が、リーダーに就くような日が近い将来やってくるのか。イノベーションの遅れが、問題視されることの多い美術業界。変化がそこまでやってきていることを予感させるコースの誕生に、期待が高まる。