NEWS / HEADLINE - 2019.10.3

東京大学教員有志が文化庁の補助金不交付決定に声明を発表。「脅迫行為に実質的に加担することにもなる」

「あいちトリエンナーレ2019」に対する補助金不交付決定に対して、10月3日、東京大学教員有志が抗議声明を発表した。

東京大学の大講堂(安田講堂) 出典=ウィキメディア・コモンズ Wei-Te Wong from Taipei City, Taiwan, Republic of China [CC BY-SA 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)]

 文化庁が「あいちトリエンナーレ2019」に対して交付予定だった補助金約7800万円を全額不交付とすることを決定。9月26日にこのことが報じられて以来、美術評論家連盟、日本現代美術商協会、「文化庁アートプラットフォーム事業」メンバー、東京藝術大学教員有志などが抗議声明を発表してきた。

 そして10月3日、東京大学教員有志が声明を発表した(全文は記事末尾に掲載)。呼びかけ人は池上高志(総合文化研究科教授・芸術創造連携研究機構フェロー)、加治屋健司(総合文化研究科准教授・芸術創造連携研究機構副機構長)、河合祥一郎(総合文化研究科教授・芸術創造連携研究機構機構長)、小林真理(人文社会系研究科教授・芸術創造連携研究機構フェロー)の4名。

 声明のなかでは、全額不交付の決定が、文化芸術事業団体を萎縮させ、文化芸術の振興に悪影響を及ぼすと同時に「展覧会を妨害する脅迫行為に実質的に加担することにもなり、大きな問題であると考えています」と批判。

 今回の事案は、同大学の芸術創造連携研究機構の教員が中心となって声明をまとめたが、「科研費のような学術のあらゆる補助金にもかかわる問題でもあるため、機構以外の東大教員にも賛同を募っているところです」として、一丸となって抵抗する姿勢を示している。

 いっぽう、文化庁が日本及びその文化政策に対する国内外からの信用を毀損することによって、補助金の支出元「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業」の目的(「国内外への戦略的広報の推進、文化による『国家ブランディング』の強化、『観光インバウンド』の飛躍的・持続的拡充)のいずれも実現しておらず、かえって後退させてしまったと指摘。多方面に及ぶ悪影響を言及している。

 この声明には、呼びかけ人を含めて28人(3日午前10時時点)が賛同者として名を連ねている。

文化庁によるあいちトリエンナーレへの補助金の不交付決定に対する東京大学教員有志の声明

 文化庁の2019年度文化資源活用事業費補助金「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業」(以下,文化資源活用推進事業)の補助金審査における「「あいちトリエンナーレ」における国際現代美術展開催事業」(以下,あいちトリエンナーレ)への補助金の不交付決定について強く抗議し,不交付決定を取り消すことを要望します。

 文化庁は2019年9月26日に,文化資源活用推進事業の補助金審査の結果,補助金適正化法第6条等に基づき,あいちトリエンナーレへの補助金を全額不交付とすると発表しました。すでに採択通知が出された補助金を全額不交付とする理由として,「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」を認識していたにもかかわらず,それらの事実を申告しなかったことを挙げています。しかし,展覧会の準備において様々な懸念事項があることは一般的であり,また,文化芸術はどのようなものであっても脅迫やテロ行為の対象になる可能性があることを考えれば,申請時にそうした予測に触れなかったりその後の相談をしなかったりしたことをもって補助金の全額不交付とすることは,均衡を欠いた著しく不当な決定です。

 今回の決定は,申請書の到着から交付の決定を行うまでの標準的な期間である30日から大きくずれ込んで行われたため,文化庁はその間に報道等であいちトリエンナーレに対する脅迫やテロ行為の予告や「表現の不自由展・その後」の展示中止等について十分に認識する立場にありました。文化庁は,文化芸術基本法の前文で謳われた「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し,文化芸術活動を行う者の自主性を尊重する」という理念のもと,脅迫やテロ行為の予告に屈しない姿勢を国内外に示して愛知県を支援することをせず,反対に補助金を全額不交付として展覧会の遂行を困難なものにすることによって,展覧会を妨害する脅迫行為に実質的に加担し,再開に向けた愛知県の動きに不当に干渉しています。

 申請時の予測の言及やその後の相談の有無を理由に,採択通知を出したものに不交付決定を行う今回の処分は,文化芸術活動を振興するための補助金の活用として適切とは言えません。このことは,地域で文化芸術事業に取り組む団体の企画や応募を萎縮させ,文化芸術の振興に悪影響を及ぼします。

 今回のあいちトリエンナーレをめぐる問題については,海外でも大きな注目を集めています。文化庁は,表現の自由に対する攻撃を看過した上でそれに実質的に加担し,日本及びその文化政策に対する信用を毀損することによって,本事業の目的である「国内外への戦略的広報の推進,文化による「国家ブランディング」の強化,「観光インバウンド」の飛躍的・持続的拡充」のいずれも実現していないばかりか,かえって後退させてしまったと言わざるを得ません。

 以上のことから,文化庁による補助金の不交付決定について強く抗議し,取り消すことを要望します。