伝統的な絵画の手法と現代的なモチーフを融合させてきた画家・山口晃による画集『親鸞 全挿画集』が、青幻舎より刊行される。
『親鸞』は三部作として2008年9月に始まり、14年7月に完結するまで足かけ7年にわたって連載された五木寛之による新聞小説。山口が担当した挿画は、大きな話題を呼んだ。
本書では全1052回分の挿画と解説コメントのほか、ボツのものや山口自身が気に入らず差し替えになった絵、ラフスケッチなどを収録。ペンや墨、鉛筆による繊細なタッチから大和絵風の鳥瞰図、コミック調のコマ割り、ダジャレ絵解き、山口による『すゞしろ日記』風のエッセイマンガなど、豊かなアイデアの数々を見ることができる。
本書の中で山口は、「『思う存分やって下さい』——。お言葉通り拙い筆ながら力をふり絞って思う存分やっておりましたら、割と早い段階で先生の指導を頂きました。『ものには限度がある』『言葉を全て真に受けてはいけない』其う云う当たり前の事に改めて気付かされる三十九歳の秋でした」とコメント。尽きることのないユーモアとアイデアで、新聞小説挿画の常識を覆す怪作が生み出された背景に迫る本書に、期待が高まる。
なお、銀座 蔦屋書店では「山口晃 『親鸞 全挿画集』刊行記念展」が開催中。こちらの会期は2月24日まで。