アルベルト・ジャコメッティ(1901〜1966)は、スイスに生まれフランスで活躍した、20世紀ヨーロッパにおけるもっとも重要な彫刻家の一人として知られている。オセアニアの彫刻や、キュビズム、そしてシュルレアリスムなど、同時代に起こった様々な動向を吸収したジャコメッティは、1935年から身体を線のように長く引き伸ばした独自のスタイルを生み出していった。
その、ジャコメッティの初期から晩年まで、彫刻をはじめ、油彩、素描、版画など、約135点が並ぶのが「ジャコメッティ展」だ。本展には、マグリット&エメ・マーグ財団美術館(ニース)から多数の作品が来日。同館はパリとチューリッヒのジャコメッティ財団と並び、世界3大ジャコメッティ・コレクションと知られており、記者発表会には同館のオリビエ・キャプラン館長が登壇し、本展について次のように語った。
「ジャコメッティの哲学者的な側面と、少し遊び心がある側面と両方を楽しんでもらえます。ジャコメッティの作品は、人間とはなんなのかという探求から生まれているので、それを堪能してもらえるような展覧会になっています」。
本展では、ジャコメッティの作品を年代順、グループに分けて展示。チェース・マンハッタン銀行から依頼を受け、ニューヨークの広場のために制作するも実現しなかった、3つの大作《歩く男Ⅰ》《女性立像Ⅱ》《大きな頭部》(3点とも1960)が揃って出品されるなど、ジャコメッティの代表作が並ぶ。
なお、イタリアで開催される第57回ヴェネチア・ビエンナーレ(5月13日〜11月26日)のスイス館では、ジャコメッティにオマージュを捧げた展覧会「ヴェネチアの女たち(Women of Venice)」が展開されるなど、ジャコメッティへの注目が高まる本年。本展は、没後から約半世紀を経た、巨大な彫刻家と向き合う絶好の機会となるだろう。