東京都美術館は毎年数多くの公募展に会場を提供し、様々な作家の作品発表の場という役割を担ってきた。今回はその公募展との連携を発展させ、毎年設定したテーマのもと、公募団体で活躍する作家を選定し紹介する「上野アーティストプロジェクト」を開始する。
その第1回展となる本展では「現代の写実ー映像を超えて」をテーマに、9人の作家を紹介。現代では、都市に氾濫する広告看板やディスプレイ、生活に密接に関わるスマートフォンやテレビなどを通して、多くの映像情報が飛び交う。そんな現代において、9人の作家たちは、絵画にしかできない表現、「現代の写実」を追究する。
本展では、作家たちのリアリティを追い求める表現に合わせて、3つの章に分けて構成されている。「映像を超えて」では一見写真的、映像的でありながら、緻密な表現によって絵画にしかなし得ない奥深さを持つ写実絵画として小森隼人、塩谷亮の作品を展示。
続く「記憶のリアリティ」では、工場の廃墟などをテーマに描く橋本大輔、叙情的な里山の風景画を描く小田野尚之の作品が並ぶ。
そして最後は「リアリズムの諸相」として、絵画にしかできない様々な手法を用いながら、各自のリアリティを追求する5人の作家を紹介。現代の都市をモチーフに近未来の廃墟を描く版画家の元田久治や、写真には表せない現実感覚を、シュルレアリスムの技法を用いて、巨大な画面に落とし込む稲垣考二、そのほか、蛭田美保子、佐々木里加、岩田壮平の作品が並ぶ。
なお、本展に合わせて、同館では「東京都現代美術館所蔵 近代の写実」を開催。明治洋画の先駆者である本多錦吉郎や、大正期洋画グループ「草土社」に参加した河野通勢らの作品が展示される。