横山大観は1868年に水戸に生まれ、88年に母方の姻戚横山家を継ぎ、姓を横山と改めた。翌89年に東京美術学校(現、東京藝術大学)に一期生として入学し、岡倉天心らに学び、その後1896年には同校助教授となる。しかし、1898年には天心らとともに辞職し、日本美術院創設に参加。新たな日本画の姿を探求した画家として知られている。
近代日本画の巨匠として、いまなお幅広い人気を誇る大観。本展は、西洋化が進みつつあった当時において、日本の絵画の伝統技法を継承しつつも、ときに従来の型にはまらない、自在な画風見せた大観の画業を回顧するもの。
構成は明治、大正、昭和の時系列に沿った3章構成。40メートル超の「日本一長い画巻」として知られる重要文化財《生々流転》(1923)の一挙公開(鉛筆画の小下絵画帳も同時公開)や、かがり火に夜桜が浮かび上がる《夜桜》(1929)と、鮮明な赤とプラチナがまばゆい《紅葉》(1931)の同時展示など、まさに大観の代表作が揃う、生誕150周年にふさわしい内容となっている。
さらに本展で注目したいのは、新出の作品だ。105年前に刊行された『大観画集』にモノクロで掲載されて以降、行方が分からなかった縦140×横113センチメートルに及ぶ個人蔵の大作《白衣観音》(1908)が、100年ぶりに発見され展示されるほか、ハレー彗星を水墨画で描いた同じく個人蔵の《彗星》(1912)など、これまで美術館では見ることができなかった「幻の作品」が並ぶ貴重な機会でもある。
大観の単独回顧展としては、東京国立近代美術館で1959年以来2度目。京都国立近代美術館では2004年以来2度目となる本展。日本画の可能性を追い求めた一人の男の生涯を辿りたい。