1968年宮城県生まれの青野文昭は、宮城教育大学大学院在学中の90年代から、「修復」をテーマに制作をつづけてきた。その制作方法は、空き地や海岸にうち捨てられたものの断片を拾い、その欠損部分を知識や想像力で「なおす」というもの。東日本大震災の後には、被災物を用いた作品にも取り組んできた青野。欠落した部分を通して他者の記憶と向き合い、そこに自身の想像に基づく新しいかたちを与えながら、「復元」を行っている。
本展「コンサベーション_ピース」は、記録と記憶の在り方をテーマとした2015年の企画展「カンバセーション_ピース:かたちを(た)もたない記憶 小西紀行+AHA!」からの連続企画だ。断片を用いて制作を行う青野と、私的に遺された記録の収集に着目したAHA! の2組のアプローチを通して、失われていく記憶を保存(conservation)し蘇らせ、受け継いでいくことの意味を考える企画展だ。
本展では、青野の活動を振り返る旧作が展示されるほか、作家自身も縁のある吉祥寺で、約1年をかけて進められた大作が発表される。
戦争や震災の記録や記憶をのかけら(piece)を通して、平和(peace)のかたちを改めて見直す機会を与えてくれる展示となっている。