遺されたものを保存して受け継ぐことの意味とは? 青野文昭の展覧会が吉祥寺で開催

空き地などに捨て置かれたものから作品を制作している青野文昭が、武蔵野市立吉祥寺美術館で「コンサベーション_ピース ここからむこうへ part A 青野文昭展」を開催する。会期は9月9日〜10月15日。

青野文昭 なおす・復元・宮古・鍬ヶ崎(震災後宮古実家跡地より収集した記念時計より)2011 photo by Tsutomu Koiwa

 1968年宮城県生まれの青野文昭は、宮城教育大学大学院在学中の90年代から、「修復」をテーマに制作をつづけてきた。その制作方法は、空き地や海岸にうち捨てられたものの断片を拾い、その欠損部分を知識や想像力で「なおす」というもの。東日本大震災の後には、被災物を用いた作品にも取り組んできた青野。欠落した部分を通して他者の記憶と向き合い、そこに自身の想像に基づく新しいかたちを与えながら、「復元」を行っている。

青野文昭 なおす・代用・合体・連置(震災後亘理町荒浜で収集したトーマスのコップの復元・回向するかたち)2016 2016 photo by Tsutomu Koiwa

 本展「コンサベーション_ピース」は、記録と記憶の在り方をテーマとした2015年の企画展「カンバセーション_ピース:かたちを(た)もたない記憶 小西紀行+AHA!」からの連続企画だ。断片を用いて制作を行う青野と、私的に遺された記録の収集に着目したAHA! の2組のアプローチを通して、失われていく記憶を保存(conservation)し蘇らせ、受け継いでいくことの意味を考える企画展だ。

青野文昭 なおす・代用・合体・連置(東京・井の頭自然文化園で使われていた自転車の復元から)2016 2016 photo by Tsutomu Koiwa

 本展では、青野の活動を振り返る旧作が展示されるほか、作家自身も縁のある吉祥寺で、約1年をかけて進められた大作が発表される。

 戦争や震災の記録や記憶をのかけら(piece)を通して、平和(peace)のかたちを改めて見直す機会を与えてくれる展示となっている。

編集部

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