写真と近現代美術史の美術評論家、光田ゆりが企画する、現代写真と彫刻のありかたを考えるαM2017「鏡と穴-彫刻と写真の界面」シリーズ。第一弾の高木こずえにつづき、第二弾は澤田育久の個展が開催される。
澤田は1970年東京生まれ。2014年̃から都内で「ALTERNATIVE SPACE The White」を主宰している。
本展で展示される「closed circuit」シリーズのタイトルは「閉路」を意味しており、これは澤田の代表作だ。この「閉路」は地下鉄のような地下網を表す言葉だという。
澤田は夜ごと都内の地下鉄を乗り換え、乗り継ぎながらチューブの内側を撮影し続ける。澤田の撮影場所は主に、この地下鉄の駅構内にある乗り換え通路だ。実際の地下空間の壁には凹凸や歪みがあり、それはいわば「彫刻的存在」であるともいえる。しかし、澤田がとらえた地下の写真には、現実の地下鉄駅構内で感じられる不衛生さやほの暗さ、壁のざらつきなどが存在しない。撮影した範囲はすべて白と黒に還元され、壁や天井、床が一続きとなった、フラットな一枚の写真に変換される。
彫刻的存在である地下空間を、澤田はどのように「写真化」するのか。写真と彫刻の循環を会場で確かめたい。