企画展示「アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―」が国立歴史民俗博物館で10月に開催。国立アイヌ民族博物館との共同企画【2/2ページ】

 「第3章 アイヌ文化を見せていく時代」では、戦後のアイヌ民族と博覧会の関係性の変化に目を向ける。第二次世界大戦後、国際博覧会では「人間展示」が行われなくなり、テーマや基本理念が重視されるようになる。しかし、日本国内では戦後の復興や観光振興を背景に各地で博覧会が開催され、アイヌ民族も出品・出場を続けていた。戦前からの「原始」性を強調する展示が残るいっぽうで、次第にアイヌ民族自身が何を見せるかを主体的に企画する動きも生まれていったという。

 また、1970年の大阪万博以降、国内で開催された国際博覧会では、「日本のまつり」や「北海道の日」などのプログラムのなかで紹介されるようになったことも本章では描き出す。

《山丹錦》 立教小学校(国立アイヌ民族博物館寄託)
川村則子《ミンタラ》(1988) 公益社団法人北海道アイヌ協会

 最終章となる「第4章 アイヌ民族と博覧会のゆくえ」では、2025年の大阪・関西万博で行われたアイヌ舞踊公演「ウレㇱパ モシㇼ」と展示「イランカラㇷ゚テ」を取り上げ、「アイヌ民族と博覧会」の現在とそのゆくえに焦点を当てる。

「大阪・関西万博でのアイヌ舞踊公演時の会場全体の様子」(2025) 公益財団法人アイヌ民族文化財団

 近年、アイヌ民族や文化をめぐる社会的関心が高まり、表現のあり方も多様化している。博覧会のみならず、「文化を見せる場」は、参加するアイヌ民族に何をもたらすのだろうか。そこで得られた経験やつながり、葛藤などの過程をたどることで、日常にある個々人の営為の積み重ねと、その先にある博覧会を描き出すことを最終章では試みる。

「大阪・関西万博のアイヌ舞踊公演のために作成・使用された資料群」(2025) 個人蔵
「大阪・関西万博のアイヌ舞踊公演時に加藤峻也が着用した衣服」 個人蔵

 また、今年の3月にリニューアルオープンした総合展示第5室「近代」では、「アイヌにとっての近代」「琉球・沖縄からみた近代」「『水平』をめざして」といった3つの視点も設けられている。今回の共同開催は、この第5室の展示構築にあたって連携を行った国立アイヌ民族博物館との研究を踏まえて立ち上がったものとなっているため、あわせて鑑賞したい。

編集部