名古屋を代表する観光名所である名古屋城で、「名古屋城 秋の特別公開」として4組のアーティストが史跡を活用し新作発表するアートプロジェクト「アートサイト名古屋城 2023 想像の復元」が開催される。会期は11月29日~12月10日。
現在も復元作業が続く名古屋城。本展では、その築城にまつわる歴史や、近世城郭御殿の最高傑作といわれている「本丸御殿」を10年かけて復元した軌跡、日本随一の規模を誇る回遊式大名庭園である「名勝二之丸庭園」の復元に要した調査研究など、名古屋城が長い時間をかけて続けてきた「復元」という創造的な行為を起点に、そこからインスピレーションを受けた4組のアーティストが、名古屋城でしか成立しない屋外作品や参加型の作品を展開するという。参加作家は玉山拓郎 + GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督。キュレーターは服部浩之が務める。
身近にあるイメージを参照し生み出された家具や日用品のようなオブジェクト、室内空間をモチーフに、鮮やかな照明や映像、音響を組み合わせたインスタレーションで注目を集める玉山拓郎は、気鋭の建築コレクティブ「GROUP」(井上岳、大村高広、 齋藤直紀、棗田久美子、赤塚健)とともに、本丸御殿の中庭を掃き掃除する手入れに着想を得て、屋外で発光する大型インスタレーションを制作する。
「世界は区別のない一つの物」とのコンセプトのもと、表裏、内外など、当たり前と見なされている対立項の解消を素材から必然的に成る形の彫刻で実証したり、人間の知識や見ることの限界を「部分しか見えない」状況のインスタレーションで提示する寺内曜子。本展では茶席空間から、「私たちは世界の部分しか見ることができない」という前提のものと、全体像や大きなつながりへの想像を喚起するミニマルな作品群を展示する。
身の回りにある「言葉」や「もの」「風景」を発想の源にし、ベニヤや角材などホームセンターで入手可能な規格サイズの木材を用いて立体化する作品を制作する丸山のどかは、二之丸庭園にかつてあった営みや情景を時代背景から想像しつつ写し取った状況を別の素材やかたちに変換する彫刻作品を、庭園全体で展開する。
アーティスト・コレクティヴ「Nadegata Instant Party」のメンバーで、映像の時間概念を空間やプロジェクトへ応用し、その場でしか体験できない「時間」を作品として展開する山城大督。今回は、名古屋城築城以前から存在する樹齢600年と言われている榧の木(かやのき)に注目し、「香り」をテーマにしたプロジェクト型作品を展開するという。
城内の広範囲にわたって作品が点在し、秋の名古屋城を散策するようにアートを楽しめる本展。会期中は開場時間を延長し、夜間の時間帯も作品が鑑賞可能なため、「名勝二之丸庭園」の紅葉ライトアップや、光をつかった作品にとくに注目したい。加えて、明治初期に陸軍の弾薬庫として建設されたレンガ造りの倉庫「乃木倉庫」が特別公開されるので、あわせてチェックしてほしい。