東京・浅草に日本初の映画常設館「電氣館」が誕生したのが1903年。それより120年近く、シネマ・コンプレックス全盛の現在にいたるまで、日本人がどのように映画に親しんできたのかをひも解く展覧会「日本の映画館」が、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。会期は4月12日〜7月17日。
人々の暮らしのなかにある映画という文化は、社会情勢や生活スタイルの変化とも密接に関わってきた。本展は、映画館の写真、プログラム、雑誌・書籍、実際に映画館で使われた品々などを通して、日本における映画館の誕生から映画興行の発展、ミニシアターの隆盛、シネマ・コンプレックス登場までを「観客の映画史」としてたどるものだ。
展示では、映画興行発展の象徴となった東京浅草六区や、戦前期の映画館建築から、戦時下の映画館の状況などを紹介。また、戦後の映画黄金期の映画館や、全国各地に生まれた映画館、1980年代のミニシアターブーム、映画館をめぐる本といった多彩なトピックが示される。
また、川崎と北九州というふたつの大都市を例に、創業100周年を迎える川崎のチネチッタ(旧美須興行)と、北九州の映画・芸能資料館「松永文庫」が所蔵する旧蔵資料を展示。貴重な資料によって市民と映画館との関わりを提示する。
シネマ・コンプレックスの全国展開により地方館が希少になり、また新型コロナウイルスの影響により映画興行の価値について活発な言及がなされるいま、この国の「観客の映画史」を見直す貴重な機会となりそうだ。