ヴィデオ・インスタレーションの先駆者として知られるアーティスト、ピピロッティ・リスト。その大規模個展「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island-あなたの眼はわたしの島-」が、京都国立近代美術館で開催される。会期は2021年4月6日〜6月13日。
ピピロッティ・リストは1962年、スイスのザンクト・ガレン州グラブス生まれ。幼少期から自分の名前が好きではなかったリストは、大学時代にこれまでの愛称「ロッティ(本名のシャルロットに由来)」と『長くつ下のピッピ』の主人公の名前「ピッピ」を組み合わせて、新たな名前と人格を持つ「ピピロッティ・リスト」を生み出した。
ウィーン応用美術学校でデザインと写真、バーゼルのデザイン学校でヴィデオを学んだ後、80年代後半よりテレビ番組やポピュラーカルチャーを取り入れた映像作品の制作を開始。86年に自身を撮影したカラーの短編ヴィデオ作品をスイスのゾロトゥルン映画祭に出品・受賞したことをきっかけに、ヴィデオ・アーティストとしての道を進むことになった。
大きな転機となったのは98年のヴェネチア・ビエンナーレで発表され、若手作家優秀賞(プレミオ 2000)を受賞した《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》と《わたしの海をすすって》。以降、ニューヨークのタイムズ・スクエアのマルチビジョンでの夜間投影や、ポンピドゥー・センター前広場への屋外投影、金沢21世紀美術館のトイレ内での作品設置など、映像展示の可能性を広げてきた。
本展では、上述の《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》をはじめ、身体、女性、自然、エコロジーをテーマとした作品およそ40点を展示。自然と人間の共生をのびやかに謳う近年の大規模な映像プロジェクション、映像と家具が溶け合ったリビングルーム、リサイクル品を活用した屋外作品まで、約30年間の活動の全体像を本格的に紹介するものとなる(なお展示室内では靴を脱いで鑑賞することになるので、靴下と靴袋を持参するのが望ましい)。