日本を代表するミュージシャン、作曲家である坂本龍一による過去最大規模の展覧会「坂本龍一:观音听时|Ryuichi Sakamoto: seeing sound, hearing time」が、2021年3月5日より北京の私設美術館・木木美術館(M WOODS)の新館、木木芸術社区(M WOODS HUTONG)で開催される。
1970年代後半から、日本のみならず国際的にも音楽とアートの分野横断的なコラボレーションを模索してきた坂本。イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のメンバーとして日本の電子音楽を開拓し、その後アカデミー作曲賞やグラミー賞を受賞することなどで国際的な地位を築いた。近年では美術展や芸術祭への参加など、音楽と映像を組み合わせたインスタレーションの作品発表の機会も増えている。
本展では、坂本の過去30年間の主要な作品や、本展のために制作されたサイトスペシフィックなインスタレーションを紹介。難波祐子、王宗孚(ビクター・ワン)、張有待(ジャン・ユウダイ)をキュレーターに迎え、アーティストの高谷史郎や真鍋大度、Zakkubalan、映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンと共同制作した作品を展示する。
木木美術館のアーティスティック・ディレクター兼主任学芸員の王宗孚は、「坂本龍一の活動において重要なのは、多様な媒体を通じて行われる、様々なアーティストとのコラボレーションだ」としつつ、本展について次のように語っている。
「本展は、坂本がいかに多面的なアーティストであるかを示すものだ。音とアート、音楽と情報の境界線を再考したい。そして、アートや音楽が世界や現実をよりよく理解するための方法として、ある種の主張としての(坂本の)実践に目を向けてみてはいかがだろうか」。
例えば、坂本と高谷とのコラボレーションにより音と映像を全身で感受するインスタレーション《LIFE - fluid, invisible, inaudible ...》や、真鍋とのコラボレーションによる、人間がふだん知覚できない「電磁波」をセンシングし可視・可聴化した《センシング・ストリームズ―不可視、不可聴》など、大規模なサウンドインスタレーション8作品が展示予定だ。
展示作品について王はこう続ける。「本展では、大規模なサウンドインスタレーションを中心とした8つの主要作品を通して、美術館を音と情報の百科事典のような存在に転換する。坂本の作品の流動性をより深く理解することができる」。
なお本展について、坂本はステートメントで次のようにコメントしている。「中国で初めて、私のサウンドインスタレーション作品のほぼ全てを展示していただけることになったのは、望外の喜びです。 私の作品を通して中国の方々に、音とノイズの境界、また音と静寂の境界、そして音と映像の間(あわい)を楽しんでいただけるように願っています」。