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#あつまれどうぶつの森 に世界初のバーチャル美術館を開館。木木美術館のオンライン戦略とは?

北京798芸術区にある私設美術館・木木美術館(M WOODS)は、Nintendo Switchのゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」でバーチャル美術館を開いた世界で最初の美術館だ。コロナ禍における美術館のオンラインでの取り組みについて、同館の共同創設者である晚晚(ワンワン)に聞いた。

文=陸冉(アート・ライター) 訳=編集部

「あつまれ どうぶつの森」バーチャル美術館の展示風景より、デイヴィッド・ホックニー展の様子再現

 北京798芸術区にある木木美術館(M WOODS)は、若手コレクター夫婦である林瀚(リン・ハン)と雷宛瑩a.k.a.晚晚(ワンワン)によって2014年に設立された私設美術館だ。15年には中国政府の認可である民間非営利芸術機関の資格を取得。過去数年の間、同館では中国若手アーティストの個展や、アンディ・ウォーホル、ポール・マッカーシーなど国際的影響力のあるアーティストの回顧展を通じ、大きな存在感を示してきた。この美術館は、Nintendo Switchのゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」でバーチャル美術館を開いた世界で最初の美術館だ。なぜこのような取り組みを行ったのか。その背景を探った。

コロナ禍で重要なのは臨機応変さ

 遡ること2月10日、中国の主要都市がロックダウンとなるなか、木木美術館はSNS「WeChat」の公式アカウントで展覧会「アートはまだある:閉館中の展覧会」を発表した。同展はSNSを通じて鑑賞者にリーチするバーチャル展覧会で、動画をクリックすると木木美術館の3D空間が出現し、バーチャルウォールの前には、アーティストの作品が次々と映しだされるというものだ。

バーチャル展覧会「アートはまだある:閉館中の展覧会」

 あらゆる領域でビジネスをオンラインに移す際には、多少なりともネガティブな要素が存在する。しかし木木美術館は違う。晚晚はこう語る。「何かしなければと思ったのです。当時は特別展を準備していましたが、オフラインがダメになったらオンラインにと、自然に考えました」。

 同規模の美術館同様、木木美術館での展覧会には国内外に多くの関係者がおり、計画には年単位の時間を要する。しかしこのコロナ禍では、スケジュールはあてにならない。何よりも重要なのは臨機応変さなのだ。

 このバーチャル展覧会の企画プロセスについて、晚晚は「脚本を書きながら撮影していく香港ドラマのようでした」と冗談めかして振り返る。「まずいくつかのコンセプトを決めてから、アーティストたちとコミュニケーションをとっていったのです」。アーティストたちはバーチャル展覧会で自分の作品を展示することを快く受け入れ、この困難な時期における団結を示した。

木木美術館の共同創設者・晚晚 (C) M WOODS

 「オンラインであれオフラインであれ、活動は続ければならないのです。パンデミックにおけるオンラインプロジェクトの目的はただひとつ。ポジティブであり続けること、希望を持ち続けることです」。

 今回のバーチャル展覧会がこのようにスピーディーに実現できたのは、美術館の若いチームの存在が大いに関わっている。林瀚と晚晚はともに1987年生まれだが、美術館内には96年や97年生まれのスタッフも多い。中国ではモバイルネットワークが非常に発達しており、若者は多く時間をオンラインで過ごしている。だから晩晩は「オンライン展覧会の準備も自然で、特別な仕事だとは思わなかった」という。

世界初の「あつまれ どうぶつの森」バーチャル美術館

 3月に入り、中国では公共の場所はまだオープンしていなかったものの、ウイルス感染拡大自体は緩和していた。そんななか、20日には任天堂がゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」を発売。中国でもブームを巻き起こした。

 美術館ではゲーム好きなスタッフが、林瀚と晩晩に「我々の美術館を『島』に移そう」と提案。その1週間後にはゲーム内に木木美術館が出現し、過去の展覧会が忠実に再現された。

「あつまれ どうぶつの森」バーチャル美術館の展示風景より、アンディ・ウォーホル展の様子再現

 晩晩は「アイデアを聞いたとき、天才だと思いました。すぐにやろうとなったのです」と振り返る。発案者は、ACG文化(中国でのアニメ・マンガ・ゲームの総称)を愛し、(当然)アートも愛する美術館のデザインディレクター・田宇だ。彼は昨年のデイヴィッド・ホックニー展で出品された主要作品をゲーム内で描くことを試し、過去の展覧会を再現するというアイデアを思いついた。ゲームの特性上、田宇はホックニー、アンディ・ウォーホル、ニコラス・パーティー、陸揚といった比較的認知度の高いアーティストの作品をピックアップ。当初の展示風景の写真を参照しつつ、額縁の位置まで調整したという。

 4月初旬、「あつまれ どうぶつの森」に誕生した美術館は、ライブ動画配信として鑑賞者に公開された。その後、彼らは制作舞台裏の動画で、自分だけの美術館づくりの方法も公開する。

 田宇は、「バーチャル美術館開館前のライブ動画配信に参加した視聴者たちは、ぜひ見学したいと、とても積極的な反応を示しました」としつつ、「実際に『島』に入ってからは、(ゲーム内のキャラクターが)顎を撫でながら作品をじっくりと見ていました」と振り返る。

「あつまれ どうぶつの森」バーチャル美術館の展示風景より、ニコラス・パーティー展の様子再現

アートはすべての人のものでなければならない

 木木美術館は設立以来、アートの伝統を破ることをつねに目指してきた。VIPや招待客だけが顔を出すニューヨークの美術館とは反対に、アートはすべての人のものでなければならないという姿勢を打ち出している。

 2016年の「Andy Warhol:Contact」展では、オープニングレセプションを一般公開し、大きな成功を収めた。以降、展覧会のオープニングは一般公開のパーティーとして行われている。こうした取り組みによって、美術館は若者たちとの距離を縮め続けており、「あつまれ どうぶつの森」での美術館開館も、自然なことだったのかもしれない。

 中国で新型コロナの影響が収束に向かうなか、晩晩と林瀚は「オンラインプロジェクトは継続されるべきだ」と語る。「ライブ動画配信や『どうぶつの森』のように、これから出てくる新しいことをつねに受け入れ、アートの実験的な面を保っていきたいのです」。

木木美術館の共同創設者、林瀚と晚晚 (C) M WOODS

編集部

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