2020.9.26

東京オペラシティアートギャラリーと同時開催。東京都写真美術館の石元泰博展は「生命体としての都市」にフォーカス

東京都写真美術館、高知県立美術館、東京オペラシティアートギャラリーは、写真家・石元泰博の生誕100年を記念した回顧展を共同企画。東京都写真美術館では、「生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市」が開催される。会期は9月29日〜11月23日。

石元泰博 シカゴ こども 1958-61頃 東京都写真美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター
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 東京都写真美術館で、写真家・石元泰博の生誕100年を記念する回顧展「生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市」が開催される。会期は9月29日~11月23日。

 東京オペラシティアートギャラリーの「生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代」(10月10日〜12月20日)と同時開催となる本展では、シカゴと東京を往還することで構築された石元独自の都市観にフォーカスし、ミッドキャリアから晩年にいたる作品に注目。「生命体としての都市」に向けた眼差しを、選りすぐりの166点で紹介する。

石元泰博 シカゴ 街 1959-61 東京都写真美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター

 石元は1984年、シカゴのインスティテュート・オブ・デザインで写真を学び始め、その勉強ぶりは「1日29時間写真に向かう」と形容されるほどだったという。シカゴでの撮影数は6万カットにおよび、写真集『シカゴ、シカゴ』に結実した。

 60年代にシカゴから東京に移って以降、亡くなるまでの約60年間は東京を拠点に撮影を続け、一貫して人物、建築、自然、それらが交わった痕跡を等価にとらえた石元。本展では東京を舞台にした作品群のほか、山手線の全29駅(当時)を8×10インチ判の大型カメラで撮影した「山の手線・29」シリーズもあわせて展示する。

石元泰博 東京 街 1964-70 東京都写真美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター

 また石元は、53~54年と81~82年に桂離宮をとらえた一連の作品を制作。今回は50年代のオリジナルプリントに加えて、80年代に撮影された作品を、石元本人の許可を得て写真家・原直久がプリントしたものもあわせて展示。代表作のなかで、30年の時を経て変容した石元の視線をたどることができる。

石元泰博 桂離宮 中書院東庭から楽器の間ごしに新御殿を望む 1981-82
東京都写真美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター

 加えて本展では、季刊『approach』(竹中工務店)の73年春号から、他界した2012年の春号まで表紙を飾り続けた多重露光による作品や、写真集『刻(とき)』に昇華されたシリーズ、そして、石元が85歳でスタートした、渋谷駅前のスクランブル交差点で信号待ちをする人々をノーファインダーでとらえたシリーズ「シブヤ、シブヤ」などを展覧する。

 シカゴや東京の街に暮らす人々の姿から色彩豊かな多重露光まで、多角的な仕事を振り返る本展。石元が影響を受けたモダンデザインの理念が写しだされた独自の写真表現は、多くの人に新たな示唆を与えることだろう。

石元泰博 色とかたち 2008 東京都写真美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター
石元泰博 人の流れ 2001 高知県立美術館蔵 (C) 高知県, 石元泰博フォトセンター