「遊びをせんとや生まれけむ」とは、平安時代末期の歌謡集『梁塵秘抄』の有名な一節。東京・六本木のサントリー美術館で開催の「遊びの流儀 遊楽図の系譜」は、このように文学や美術作品に多く描かれきた「遊び」の変遷をたどる展覧会だ。
本展には、人々の遊びと暮らしの関わりを描いた「風俗図」「遊楽図」から、選りすぐりの名品が一堂に集結。平安時代以降の貝合や蹴鞠、羽子板といった情趣豊かな遊びに熱中する人々の姿から、その系譜を追う。
中世以降には、中国の士君子のたしなみとされた「琴棋書画」(琴、囲碁、書道、絵画)の影響を受けて、日本でも「琴棋書画図」が屛風や襖絵として多く制作されるようになる。また近世には、花見や風流踊りに興じる人々を描いた「野外遊楽図」から、室内の様子をとらえた「邸内遊楽図」にその中心が移っていく。
なかでも注目したいのは、国宝の《婦女遊楽図屛風(松浦屛風)》(大和文華館蔵)。金地を背景とする同作には、美しく着飾った女性たちや三味線、煙草、双六盤が描かれ、近世を代表する「遊び」がさりげなく盛り込まれている。
そのほかにも本展では、身分階層を越えて人々が熱中した双六をめぐる歴史や、近世初期にポルトガルから伝来し、「遊びながら学ぶ」目的にも用いられたカルタ遊びの変遷を総覧する。「遊楽図」の系譜から、かつての人々が集い、生き生きと遊ぶ姿に思いを馳せてみてはいかがだろうか。