古来、日本と中国の僧侶たちの間には往来があり、中世の禅僧間においてはより活発な交流が行われるようになった。栄西(ようさい)や円爾(えんに)などの著名な禅僧をはじめ、この時期の日本人留学僧は200人以上におよぶ。
禅僧同士の交流の様子は、師から弟子へ宛てた書簡の墨蹟からも知ることができる。そのなかでも漢文体で書かれた「尺牘(せきとく)」には、中国留学中に知り合った禅僧同士の友情や、師弟間の絆の強さが記されており、その個性豊かで独特な書風の墨蹟は、「高僧の遺徳がしのばれるもの」として大切にされ、現代まで伝えられている。
いっぽうで、絵に施された賛からも禅僧たちの友情が読み取れる。日本の禅僧は中国の文人に倣って集い、仲間とともに水墨画を鑑賞して賛を付し、詩と絵による素晴らしい作品を誕生させている。なかには雪舟のように絵画制作を専門とした「画僧」と呼ばれる禅僧もいた。
「禅僧の交流ー墨蹟と水墨画を楽しむー」と題された本展は、禅僧たちの交流の中で生まれた「墨蹟」と「水墨画」で構成。約50点の中世の名品を通して、当時の禅僧の交流の足跡が見えてくるだろう。