徳川幕府の安定した政権のもと、飛躍的に発展した日本工芸の技術。本展では、明治工芸を中心に、その礎となった江戸時代後期から、明治時代の影響が残る昭和初期までの作品を紹介する。
江戸時代には、工芸の諸分野で新たな技術が開発され、職人たちの技が光る作品が生み出されてきた。例えば鍛金による自在置物。くねくねとうねるかたちから、とぐろを巻いた状態まで、自由自在に動かすことができる蛇などは、甲冑職人によって製作された。しかし、現在まで伝わる作品の数は多くはない。というのも、明治時代になると、こうした作品は、主に輸出を目的として制作されるようになるからである。今回、自在置物は20点以上が出品されるが、これほど多種多様な作品が集結するのは、初めてのことだ。
明治時代には、江戸時代にはなかった「公開」、つまり、国内外の博覧会に出品するという目的が生まれる。そのため、工芸の分野ではより高度な芸術性、精密性が求められるようになった。たとえばビロード友禅では、非常に困難な技術を用いて、絵画のような遠近感のある織物が生み出されている。
本展に出品されている作品はすべて、宋培安(そんぺいあん)という台湾の一人のコレクターによるものだ。
海外の博覧会で絶賛される、華麗で繊細な作品の数々を見ることができると同時に、日本工芸の魅力にも気づかせてくれる展示となっている。