「もしいま武満が生きていたら」から始まる新しい表現
──次に、本公演についてもうかがいます。「武満の音楽で、遊ぶ。」というコンセプトを掲げ、従来のクラシックコンサートとは異なるかたちで制作される本公演の、狙いや今回音楽監督を務める水野さんの思いを聞かせてください。
水野 今年の春頃にNHKから「武満の没後30周年に向けて少し風変わりな企画をやれたら」とお話をいただいたのがきっかけでした。僕が主宰する「水野電氣交響楽団」は、弦楽カルテット、ドラム、さらにリアルタイムで音響や声を加工するダブワイズなどを備えた10人編成の現代的なオーケストラなのですが、本公演のプロデューサーの方が以前僕のライブに来てくださったことがあり、ゲストアーティストたちのバックバンドとして参加してほしいとご提案いただきました。
僕にとって武満徹は伝説的な存在なので、当初は恐れ多く感じる部分もあったのですが、ご遺族の武満真樹さんとNHKの両者で考えたという「ASOBIBA TAKEMITSU」というタイトルを聞いてすごく救われたんです。「『遊び場』なら、武満の音楽で遊んでもいいんだ」と自由になれた気がして、ぜひ挑戦したいと思いました。現代のポップカルチャーのサウンドに当てはめて武満作品をリコンポーズ(再構成)し、ゲストの魅力を引き出していきたいと考えています。

──本公演は90分間のステージで展開されます。具体的にはどのような作品になるのでしょうか?
水野 演出家の小栗了さんが入ってくださっていることもあり、曲ごとに途切れるライブではなく、90分間で1本のシームレスな「ショー」にしたいと考えています。僕自身、クラシカルDJとしてノンストップな空間と音楽をデザインしてきた経験があるので、そうした強みを活かせると思っています。

畠中 この企画を聞いたとき、2005年頃にイギリスで開催された「Playing John Cage」(*3)という展覧会を思い出しました。「Playing(演奏する/遊ぶ)」を掛け合わせた企画名で、様々な音楽家やアーティストが、ジョン・ケージの思想からインスピレーションを受けた作品を発表したものです。
「ASOBIBA(遊び場)」というのは非常に良いタイトルですよね。一見、物故作家の作品で「遊ぶ」と聞くと怒られそうですが、もし武満が生きていたら、若い世代の作家や演奏家と一緒に「遊びたがった」と思うんです。生前にかなえられなかった「一般の人や若い世代と音楽でつながりたい」という思いをかなえるような意味合いもあるのではないでしょうか。
水野 今回取り上げる全8曲の楽曲をどうアレンジするか悩んでいたとき、武満が石川セリとつくったアルバム『翼~武満徹ポップ・ソングス』(1995)に勇気をもらいました。武満によって選ばれた様々なアレンジャーが、ジャンルの枠を越えて楽曲を書き換えている点が印象的です。
もし武満がいま生きていたら、絶対に最新のサウンドや新しいジャンルに興味をもっていたと思います。そこで今回は、時代を経て進化してきた21世紀のビートやコード進行も取り入れ、「2026年の武満サウンド」としてアップデートするつもりでアレンジを進めています。つねにジャンルを超えて新しいことに挑戦してきた武満と、いまを生きる僕たちのコラボレーションをぜひ楽しんでいただきたいです。
*3──アーノルフィニ・ギャラリー(イギリス・ブリストル)で2005年11月4日〜06年1月14まで開催。キュレーターはデイヴィッド・トゥープ。



















