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INTERVIEW - 2018.5.3

巣をつくるカササギのように。
アーティスト・上田良インタビュー

身近なものを再構成したオブジェを写真に収め、時と場を鮮やかに切りとるアーティスト、上田良(やや)。京都のギャラリー16にて、「一時的な情景の彫刻」を撮影した作品を発表する上田にインタビューを行った。

上田良

上田良

――上田さんは、2015年度のキヤノン「写真新世紀」で佳作を受賞した作品をはじめ、近年はオブジェを写真に収めた作品を発表しています。今回のギャラリー16の個展「A Magpie’s Nest」では、どのような作品を展示する予定ですか?

自作のオブジェを屋外やスタジオで撮影した写真作品を中心に、今年から撮り始めたスナップ写真、ドローイングで会場を展示します。そのほか紙の作品や油彩作品を織り交ぜつつ、いろんな側面から自分の作品を見せられるような構成にしています。

上田良 紐状粘土、横、縦、横 インクジェットプリント 90×135cm 2018

――上田さんといえば写真作品のイメージが強いですが、版画や紙の作品も制作されているんですね。

はい。最近は写真作品を発表する機会が多かったのですが、いろいろ並行して制作しています。大学時代には、版画コースで銅版画の作品をつくっていました。

――大学時代、手法として版画を選んだきっかけはなんだったのでしょうか?

もともと、高校生の時に彫刻をつくりたいと思っていたのですが、画塾の先生から「構造的にものを考えるのがそんなに得意そうに見えないから、たぶん彫刻科は向いてない。もうちょっと違う分野で基礎を学んだほうがいい」みたいなことを言われて(笑)。それで、絵画でも彫刻でもなく、その中間のような版画のスタイルが自分にあっているとに思い、版画のコースを選びました。

――木版画、銅版画、シルクスクリーンなど、版画には様々な種類がありますが、どの手法で制作されていたのでしょうか?

銅版画でした。銅版画といってもいわゆる細密な描画ではなく、ニードルでシンプルなかたちを描くというもの。銅版を腐蝕させ溝をつくり、そこに詰めたインクを紙に移すことで、線を「彫刻」へと変換させるというコンセプトでした。

上田良 曲げられた銅板 エッチング 66.5×66.5cm 2014

――版画を通して彫刻をつくるようなイメージですね。

そうですね。他の版画の手法に比べて「表面と物質の間を行き来する」ような銅版画の手法が、自分の中でしっくりとはまりました。

――版画や彫刻への関心を経て、写真表現を作品に取り入れることになったきっかけについて教えてください。

彫刻を含め、ずっと立体物をつくりたい気持ちがあり、銅版画と並行してオブジェも制作・展示していたのですが、「何かちがう」という違和感があって。作品を発表するうちに、自分がオブジェを空間に置き、どう成立させるかというよりも、「作品や素材を触る」とか「色を組み合わせる」ことに興味があることに気づいたんです。そうした自分の関心をうまく引き出せるメディアを考えたときに、写真が適切なのではないかと気がつきました。

上田良

――上田さんの作品に登場する抽象的なかたちが特徴的なオブジェは、いつもどのようなイメージをもとに制作しているのでしょうか?

自分が勤務する美術大学で拾った廃材や偶然見つけたガラクタ、市販物を素材にオブジェを制作することが多いのですが、そうした「外部」と自分が出会ったときに、「こういうかたちを拾った。じゃあ次はどうするか」と、自分が起こす反応を重要視しています。着色された物体を見たときには、そこにどう自分が介入していくかせめぎ合いがありますし、同時に、「自分ってこういう色彩に惹かれるんや」とか、新たな自分を発見することもある。いつも素材を大量に拾い集めてくるところからスタートします。

――それらの素材をもとにオブジェつくる段階で、写真に収めたときのスケール感などをすでに想像しているんですか?

写真としての完成形を念頭に入れてつくるものはありますが、オブジェは部品でもあるので、ばらばらにつくったものを撮影のときに組み合わせることもあります。写真はいわば接着剤のような役割をしているのかもしれません。最近、昔の作品を見ていたら、「偶然撮れてしまった面白い1枚」みたいな写真が結構あることに気づいたんです。この頃は、それらの写真が視覚的にどう面白かったのかをオブジェづくりの段階から見直し、検証しながら制作しています。

――写真を注意深く見てみると、ピントの合わせ方も様々です。それらの違いに意味はあるのでしょうか?

印刷物を通してオブジェを見るときのピントは重要だと思っています。例えば、巨大なオブジェの実物を見るとその大きさに圧倒され、大きいというだけで「正しく見なくちゃいけない!」と気構えてしまうと思うんです。でも、フラットな写真になり、大きさも素材もわからない状態の場合、それがかえって作品を自由に見るきっかけにもなる気がしています。「鑑賞者が没入できる部分が、実はどこかに隠されている」といった意味として、ピントを取り入れています。

上田良 抜き片、曲げ木、格子1、格子2、影シール、粘土片 インクジェットプリント 90×135cm 2018

――個展のタイトル「A Magpie’s Nest」にはどのような意味があるのでしょうか?

「A Magpie’s Nest」は鳥の「カササギの巣」という意味なのですが、カササギは木の枝だけではなく、そのあたりに落ちているビニール紐やプラスチックを独特な方法で編み上げて巣をつくる特性があるらしいんです。音楽でも、色々な引用をもとに音楽をつくることを「カササギのような」と形容するらしく、それって私の制作行為にも通じるものがあると思い、展覧会タイトルにしました。

――個展では、今年から撮影し始めたスナップ写真も披露されるということですが、こちらはどのようなものになりますか?

私は制作時、写真の四角い枠ありきでオブジェを考えることがあります。スナップは、そんなフレーミングの能力を強化したいという動機をきっかけに始めました。またスナップはフィルムカメラで、オブジェはデジタルカメラで撮影するのですが、カメラによって自分のものの見方が規定されていることに気づきました。フィルムは、覗き込んで絞って撮るのですが、微妙に周りの空間を感じつつ没入する。デジタルだと、決まったものを操作しやすく撮る感触があります。その違いを行ったり来たりすることによって、オブジェを被写体とした写真作品にも新たな変化が生じることも楽しみにしています。