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美術館がとるべき道は有料化か「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」か?

近年ロンドンでは、長年に渡って無料で公開していたギャラリーやミュージアムの常設展を経営難対策として有料化するべきという声を聞くようになった。そのいっぽうで、経済格差によって有料の特別展から足が遠いてしまう人々への救済として、払える額だけで鑑賞可能とする「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」スキームを取り入れ、その結果として来館者数が増えている例もある。

文=坂本みゆき

上空から見た大英博物館。老朽化が進む館内外を一新するリニューアルのための大掛かりな建築コンペティションの公募もしていたCourtesy of British Museum

大英博物館の旧トップが観光客への有料化を提案

 「The Art Newspaper」によると、2009年から2023年の間に地方自治体からギャラリーやミュージアムへの資金はイングランドで36.7パーセント、ウェールズで31パーセント、スコットランドでは23パーセント減となっている。また大英博物館のキューレターの平均年収は3万1000ポンドと言われており、公立学校の教師よりも6000ポンドも少ないという。

 そんな近年の経済状況を受け、6月30日付けの『タイムズ』紙面では、かつて大英博物館のディレクターを務めたマーク・ジョーンズ卿がイギリスのすべての公立博物館は海外からの25歳以上の来館者に対して20ポンドの入館料を課すべきだという意見を披露して大きな注目を集めた。ジョーンズ卿は「ヨーロッパの他都市やアメリカの主要な博物館は来館者に入場料を課している。彼らがそうしているのだから、我々も国外からやってきた人たちに同じようなシステムを設けるのは理にかなっている」と同紙のインタビューで語っている。

 さらにこう続けている。「長い目で見れば、海外からの観光客が支払う入場料で得られた資金の一部をグローバルパートナーシップのシステムの資金に充てることも可能だ。(長年に渡ってその所有について議論されている)パルテノン宮殿の大理石を巡ってのギリシャとの関係を結ぶためには資金を調達する必要がある」。

 ちなみに有料化の対象を海外からの渡航者に限っているのは、イギリスでは国立の博物館や美術館の収蔵品は国民のためであり、無料で公開するべきという考えが根強いからだ。

広がる「Pay What You Wish」スキーム

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