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2022.7.15

TikTokが美術館を変える?  森美術館の取り組みから考える、2020年代の広報戦略

森美術館がショートムービープラットフォーム「TikTok」とパートナーシップを提携した。SNS戦略にいち早く取り組んできた同館は、TikTokのどこに勝ち筋を見出したのだろうか? またそこから考えられるこれからの広報戦略とは?

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

「#emptymoriartmuseum for TikTok creators」の様子
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 美術館の広報ツールとしていまや当たり前となったInstagramアカウントを日本の美術館のなかでいち早く開設し、SNS戦略を進めてきた東京・六本木の森美術館。同館が、モバイル向けのショートムービープラットフォーム「TikTok」と提携したことは必然的なことだったのかもしれない。TikTokが国内美術館とパートナーシップを提携するのはこれが初のケースだ(寺田倉庫とは提携済み)。

 森美術館では、TwitterやFacebookなど公式SNSの「中の人」を同館広報・プロモーション担当の洞田貫晋一朗(どうだぬき・しんいちろう)が務め、そのフォロワー数を着実に伸ばしてきた。洞田貫は『シェアする美術』(翔泳社)という著書も刊行するほど、美術館におけるSNSマーケティング戦略の重要性を認識しているひとりだ。

7月12日に行われた「#emptymoriartmuseum for TikTok creators」でTikTokクリエイターを前に説明する洞田貫

 美術館業界でいまも根強い交通広告ではなく、SNSによる広報に重きを置き、若い層を中心に展覧会を訴求してきた森美術館。Instagramを使った広報もユニークで、閉館後の美術館にインフルエンサーを招く「#empty」(「空っぽ」の意味)を2017年の「N・S・ハルシャ展」で日本の美術館で初めて実施。以来、すべての展覧会で同様のプログラムを行ってきた。その効果について、洞田貫は「#emptyの投稿を見て来館していただき、同じような投稿が増えるという波及効果がある。また、森美術館では撮影できる・発信できるんだという気づきがあるようです。美術館との相性がいい企画と言えます」と語る。

2017年「N・S・ハルシャ展」での#emptyMoriArtMuseumの様子