EXHIBITIONS

瀧本光國「相から相」

2022.05.14 - 06.25

瀧本光國 相 – アングルの瀧 2021

瀧本光國 相 – 黒い服の少女 2022

瀧本光國 相 – 黒い猫 2022

 東京画廊+BTAPでは、瀧本光國の4年ぶりとなる個展「相から相」を開催する。

 瀧本光國は1952年福岡県生まれ。77年にイタリアに渡り、ミラノで活躍する豊福知徳に師事。以降、伝統技法を守りながら、45年にわたり一貫して木彫の作品を制作してきた。そのいっぽうで、仏像修復の専門家としても活動している。

 80年代、師の影響を受けてレリーフ状の抽象彫刻を制作していた瀧本だが、90年代に表現を変化させ、具象へと近づいた。対象として選んできたのは滝や川、あるいは雲や煙など、見る人の記憶にかすかな残像として留まるかたち。これら流動的なかたちの表面に残されたノミ跡は、制作という行為の痕跡であると同時に、不定形のイメージを掴もうとする意識の働きを象徴している。

  2014年のイタリア留学からの帰国後は、近代美術史の著名な作品を借用して具象彫刻を作る「彫相」シリーズをスタートさせ、16年に東京画廊+BTAPで個展を行った。本展はそれに次ぐ、「彫相」シリーズによる展示となる。

 本展で展示する《相 – アングルの瀧》(2021)は、19世紀フランスのジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルの代表作《泉》(1820〜1856)の、水が流れ出る甕(かめ)を参照している。ほかにも、《相 – 黒い服の少女》(2022)と《相 – 黒い猫》(2022)は、バルテュスの《乗馬服を着た少女》(1932)、《猫たちの王》(1935)をそれぞれ引用している。

 瀧本がこれまで制作の対象としてきた不定の形状は、彫像を構成する諸要素に昇華され、絵画上の人物や動物は自由でおおらかな空間表現として新たな息吹を吹き込まれている。

 本展覧会の開催と合わせて、鍵岡正謹(岡山県立美術館顧問)による評論文を掲載したカタログを出版予定。