EXHIBITIONS

岩尾恵都子展

岩尾恵都子 多摩童子 2021 撮影=長塚秀人

 ギャルリー東京ユマニテでは、岩尾恵都子の4年ぶりとなる個展を開催している。5月21日まで。

 岩尾は1968年東京都生まれ。93年に多摩美術大学大学院美術研究科を修了。2000年には新人作家の登竜門「VOCA展」で大賞を受賞し注目を集めた。

 その後、KIAF(韓国アートフェア)で開催された「日本現代美術特別展」や「VOCA1994-2003 10年の受賞作品展」(大原美術館、岡山、2004)など国内外で作品を発表。近年は「クインテットⅡ-五つ星の作家たち」(損保ジャパン日本興亜美術館、東京、2015)や、「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展『ストーリーはいつも不完全……』『色を想像する』」(東京オペラシティ アートギャラリー、2021)などに出品し、東京を拠点に発表を続けている。

 岩尾の近作は、草原、山、空、家(らしきもの)をモチーフとしている。しかしそれらは本来あるべき確実な姿で現れるのではなく、時に浮遊感のある構図からは何かの物語が始まるような不思議な世界が広がる。それは作家自身が育ってきた多摩丘陵や多摩川など日々何気なく目にする原風景や、家族との他愛ない日常を通して切り取られたかたちとなって表れている。

 今回の新作は濃紺の背景が目を引く。ここ数年の難しい時間のなかでも変わることなく、山や植物の美しさ、日々の生活を愛でて、これからも作家として描き続ける意思が感じられる、そんな作品だ。

 本展はギャルリー東京ユマニテでの7年ぶりの発表。最新作の100号を中心に油彩約10点のほか、岩尾が新たに試み始めた版画作品などが展示される。