EXHIBITIONS

和田礼治郎「Market and Thieves in a Cloister」

2022.05.31 - 07.09

和田礼治郎 MARKET 2021

和田礼治郎 BICYCLE THIEF 2022

和田礼治郎 VANITAS 2021 弘前れんが倉庫美術館での展示風景 写真=Tololo studio

和田礼治郎 STILL LIFE 2006/2018 プティ・パレでの展示風景 写真=兒島洋介 協力=SCAI THE BATHHOUSE

 SCAI THE BATHHOUSEで、アーティスト・和田礼治郎の個展「Market and Thieves in a Cloister」が開催される。

 和田は1977年広島県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程彫刻専攻を修了し、現在はベルリンを拠点に活動。宇宙、生命、時間、などの形而上学的な主題への関心を、物理的な現象や力学による独自の手法で彫刻化している。

 水面にガラス製モジュールを浮かべた「ISOLA」、真鍮板と果実の腐敗の痕跡が抽象的な構図を描出する「VANITAS」、時間の暗示を含む液体を抱いた「SCARLET」、投企された生の果実が空中に浮かぶ「STILL LIFE」と、時に環境に直接的に介入し、見る者の知覚および作品の置かれた空間に作用を及ぼす多次元的な彫刻群によって、国内外で評価を確立してきた。

 本展では、和田が暮らすドイツのフリーマーケット市場でごく一般的に見られるブースを実物大で抽出した《MARKET》(2021)を中心に展示。頭上にはかつての奴隷貿易とプランテーションの象徴である果物、実物のモンキーバナナを鋳型にとったブロンズ製のオブジェが吊るされ、和田は出品作について「人間の差別意識と優越感に対する批判が込められている」と述べている。

 本展タイトル「Market and Thieves in a Cloister」には、市場と泥棒、そして中庭や、聖域といった意味の、ある限定的な空間を指す言葉が並ぶ。和田はその芸術的実践の主幹となる諸要素への探究を本展においてさらに深め、知覚に作用し、また空間に響き合う個々の作品と、それらが織り成す一連の構成によって、題名の表象に込められた静物の風景を展示室内に描き出す。