EXHIBITIONS

市制90周年記念

リアル(写実)のゆくえ

現代の作家たち 生きること、写すこと

2022.04.09 - 06.05

高橋由一 豆腐 1877 金刀比羅宮蔵

安本亀八 相撲生人形 1890 熊本市現代美術館蔵 ※会期中展示替えあり

中谷ミチコ 夜を固めるⅢ(雨) 2019 作家蔵

深堀隆介 桜升 命名 淡紅 2017 平塚市美術館蔵

前原冬樹 一刻―苺― 2017 作家蔵 撮影=橋本憲一

本田健 夏草(芝草の土) 2021 作家蔵

 平塚市美術館は企画展「リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと」を開催。松本喜三郎らが手がけた生人形、高橋由一の油彩画を導入に、現代の絵画と彫刻における写実表現を検証する。

「生人形」とは、人間のように精巧につくられた人形のこと。幕末から明治初めに流行したその迫真の技は、当時の日本人だけでなく、来日した西洋人にも大きな衝撃を与えた。明治20年代に滞日した人類学者シュトラッツは「解剖学の知識もなしに強い迫真性をもって模写することができる」生人形師の力量に感嘆。またシュトラッツは、生人形が理想化も図式化もされず、ありのままの姿であることにも着目した。

 日本人のなかで、幼い時に松本喜三郎の生人形の見世物を見た彫刻家・高村光雲は、後年、西洋由来ではない写実を気付かせた存在として、松本喜三郎をはじめとする生人形師を敬慕した。ここで重要なのは、写実表現はそもそも日本にあったということ。さかのぼれば江戸期の自在置物、さらには鎌倉時代の仏像に行きつき、写実は洋の東西を問わず追求されてきたといえるだろう。

 本展は、松本喜三郎らの生人形、西洋の写実表現を受容した高橋由一の油彩画を起点に、現代の絵画と彫刻における写実表現を検証するもの。西洋の文脈のみではとらえきれない、日本の「写実」について探る。