EXHIBITIONS

懐石の器

2022.03.19 - 06.05, 2022.07.09 - 08.14

鼠志野向付 桃山時代 16世紀 美濃窯〔鯛、ぼうふう、岩茸、わさび、しょうゆジュレ〕 撮影=越田悟全

  MIHO MUSEUMが春季・夏季特別展「懐石の器」を開催。茶の湯のなかで育まれた深い文化と、もてなしの心を土台として、日本人の豊かな感性が生み出してきた懐石の器を展覧する(展示替えあり、事前予約制)。

 懐石とは「ふところの石」。修行中の禅僧が石を温めて懐にいだき、一時の空腹をおさえたという伝承から生まれた言葉で、茶を味わう簡素な料理の呼び名だ。それは豪華な献立を誇るのではなく、心のこもった、おいしくて実のある新しい料理のかたちだった。

 懐石にはいくつかの特徴が挙げられる。出来立てを一品ずつ運ぶこと、亭主自ら給仕し楽しく主客交流すること、遠くの珍しい食材に重きを置かず身近な旬の食材を客の好みに合わせ工夫すること、そして料理にふさわしい器を楽しむことなど。千利休に始まるこうした懐石の形式は、江戸時代中期頃にはさらに整い、今日につながっている。

 本展では、MIHOコレクションの茶道具と懐石の器から名品を選りすぐって、懐石の流れに沿って展観。実際に器に料理を盛り付けた写真も添えて紹介する。

 また、江戸時代の近衛家当主であり貴族として最高の地位にあった近衞予楽院の茶会記をもとに、当時の茶会で尾形乾山作の器や和ガラスの器がどのように使われていたかを紹介するコーナーや、初公開となる大井戸茶碗「小一文字」(益田鈍翁・松永耳庵旧蔵)とその取り合わせを含め、MIHO MUSEUMの原点であるコレクションが並ぶ。