EXHIBITIONS

中村穣二「YOUR MOOD」

2022.03.04 - 04.09

中村穣二 彼女はあの日光ってみえた 2022

中村穣二 夕方の花束 2022

中村穣二 緑色の部屋で 2022

 CLEAR GALLERY TOKYOでは、中村穣二の個展「YOUR MOOD」を開催する。

 中村は1974年生まれ。身体を使った躍動的なストロークのペインティングを制作し、東京、パリ、オランダ、台湾など国内外で展覧会を開催している。作家集団「SSS」のひとりでもあり、他作家とともに前衛的かつ実験的なパフォーマンスを展開。画家としての活動のほか、展覧会のキューレーター、アートマガジンの編集者として、現代のアートシーンに新しい才能を紹介している。

 中村は、CLEAR GALLERY TOKYOでの初個展(2013)では、物質感のあるマチエールと躍動感あるストロークが美しい抽象的表現を主軸とした作品群を発表した。主に白や黒の量感のある絵具と、作家の動きが反映された大胆な手跡によって緊迫した画面は、その後多くのドローイングと、抽象から具象へと移り変わる瞬間のかたちをとらえようと直感的に描かれた線によって、ユーモラスな図像へと変容していった。さらにここ数年は様々な色彩を使用し、指や絵筆も用いることで、より繊細で表情豊かな絵画へと変わってきた。

 本展で中村は、新作の平面作品のほか、立体作品を発表する。バストアップの構図で描かれた人物画のような絵は最近中村が描き続けているシリーズであり、リラックスした曲線とつぶらな目が、シンプルな構成のなかで個性的で多様な面差しを印象付けている。

  いっぽう「どこか地方に訪れたときに出会う、作者不明のよくわからない土産物のようなもの」として粘土でつくられたオブジェは、物言いたげで愛嬌があり、奇妙な存在感を放つ。作品が提示するメッセージや物語性は、時代背景や作家の意図を理解することは価値の共有・共感をする上で重要な要素のひとつだが、「美味しいパンを売るように、美しい花を売るように、只々いい絵を描いて生活していけたら」と言う中村の作品は、委ねるという寛容さをもって、意味重視に疲弊した思考に些細ながらも豊かな美術の楽しみを思い起こさせてくれる。