EXHIBITIONS

TYM344「WHERE IT'S AT」

TYM344 西口 2022

TYM344 ミラード(東京駅アイ) 2022

TYM344 屋 2021

TYM344 大気の組成(2022年1月6日, 東京) 2022

 TYM344は、美術史上の作品や標識や看板など既存のイメージを引用し、モノクロの絵画として表現した作品で知られるアーティスト。その新作個展「WHERE IT'S AT」がOIL by 美術手帖ギャラリーで開催される。

 TYM344は東京都生まれ。早稲田大学第一文学部総合人文学科美術史学専修卒業。「絵を描くこととは、決定された画像をつくること」として、道路標識から秩父連山まであらゆる不動物を手本にして、「二値化された非・動画的な絵画」を目指している。

 イメージが氾濫し、アート作品も同様に実物よりも映像や印刷物などのコピーのほうが見られる現代で、TYM344は、情報量を制限したモノクロ絵画に図像を落とし込み、そのオリジナリティを担保しつつ強化する。それは例えば、図像が印刷物や映像として伝播し、拡大・縮小された場合もディスプレイの色味などに左右されず変質しづらいということでもある。TYM344にとって「二値化」は、絵画が確固たる普遍性を持ち、動かない(変質しない)「決定された」絵画をつくること。またTYM344は、「絵画とは『ここではない』イメージや風景を描いたもの」と言う。

 日本語で「一番いい場所」を意味する「WHERE IT'S AT」と名付けられた本展では、鑑賞者はそこにない何かを引用して制作された作品群を目にする。引用された美術史という歴史的時間軸と、個人の記憶という同時代性の交錯点を浮かび上がらせ、鑑賞者が自身にとっての「最上の場所」に思いを馳せることを促す。

 さらにギャラリー会場から展示場所を拡張し、渋谷PARCOの外壁にもTYM344の作品が出現する。