EXHIBITIONS

楊博「(Remember Mama Said)You Can’t Hurry Love」

2022.02.12 - 03.12

楊博 Wash my Levi's(a jealous guy) 2022

楊博 No title(fascinate) 2022

 Yutaka Kikutake Galleryで、楊博(Yang Bo)による個展「(Remember Mama Said)You Can’t Hurry Love」が開催されている。3月12日まで。

  1991年中国湖北省に生まれた楊は、2001年に宮城県に移住。19年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画を修了し、現在、東京都を拠点に活動している。

 楊はこれまで一貫してポップカルチャーとその受容に関わる距離感をテーマに作品を制作。実際には遠くに存在する人物や出来事にも関わらず、心理的には極めて親密なものとして迫りくるポップカルチャーを音楽を中心に享受し、ポップスターの肖像やそれらが彩る様々なシーンと自身の生活風景とを混ぜ合わせながら、独特の作品世界をつくり上げてきた。

 また楊は、作品を制作するとともに、展示作品の背景にあるストーリーを補完するようにテキストを書き、自身の受容をひも解いている。そうすることで各時代の在り様を見つけ出していく。

 本展で発表する作品群を制作する過程で、楊の頭のなかでは「魅力そのもの」というキーワードがめぐっていたと言う。人はなぜ、どのような仕組みで、何かに惹かれるのか、そして、その心理的な作用の先で、どのような心の動きや行動が生まれてくるのか。個々人に存在する心の機微は十人十色だが、たしかに影響を受けているという私たちの実感を、楊はこれを源泉として「魅力そのもの」の姿を想像し、制作に際して仮定的な道標にした。

 本展で展示される作品群は、「Fascinate(魅了する)」と繰り返し描かれた作品にはじまり、楊がこれまでも度々描いてきた音楽や映画と自身の生活風景を織り交ぜたシーンに加え、ファッションアイテムも新たにモチーフとして登場する。また、自身が同時に惹かれているものだが、新しく生まれたものが、いまでは歴史化されたものを踏み台にしているようなこともある、という事実に対して感じる葛藤や愛憎を、ルーレットのように表した作品を描くなど、より自らの内面に踏み込んだ作品も発表する。

 展覧会タイトル「(Remember Mama Said)You Can’t Hurry Love(恋はあせらず)」は、1960年代を全盛期にアメリカで活動したソウルミュージックのグループであるザ・スプリームスの楽曲からとられている。本展に寄せたテキスト「親愛なるJ.O」はYutaka Kikutake Galleryのウェブサイトに掲載され、ある人物へ宛てた手紙という形式を取りながら、より独白的で、主観的な語り口調で書かれている。