アンソニー・マイラー「On Our Way To The Devilʼs Fortress」

　ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する作家、アンソニー・マイラーの個展「On Our Way To The Devilʼs Fortress」がMAKI Gallery / 表参道, 東京で開催される。

　マイラーは1982年生まれ。2008年にニューヨーク市立大学シティカレッジにてMFA（美術学修士）を取得。そのペインティングの多くは、流線型の鳥のようなフォルムに展開する目のモチーフを軸に、静謐で瞑想的な特徴を備えている。

　いっぽうで、落ち着いた色調のペインティング作品から一転し、モノクロのグラファイト作品は、より身体性が強く、画面は突如として蔓延ったかのような一叢（ひとむら）の十字線に埋もれる。目は、今度は著しく動揺し、鑑賞者の視線を警戒するかのように線の「茂み」の後ろに隠れながらも感情的な激しさを感じさせる。

　ここ数年、マイラーのこれら2つの異なる作品群は交わりを深め、真っ黒な線と柔らかなグラデーションが同じ空間のなかに描かれるようになった。

　本展では、マイラーの幅広くダイナミックな実践を証明する16点の新作を展示。これらの作品は、マイラーの過去2年間の技術的・概念的な探究の集大成であり、作家が得意とする繊細な美しさはそのままに、新境地を開拓している。

　展覧会のタイトル「On Our Way To The Devilʼs Fortress（我らは悪魔の要塞へと向かう）」は、ともに逆境を克服する集団、あるいは、破壊に向かって行進する集団を暗示している。世界的なパンデミック、迫りくる気候変動などの大災害のなか、私たちはどれほど自分たちの意思で、いま現在の道へ進むことを選んできたのか。マイラーの思慮深い作品世界に浸り、新たな気づきを得てみたい。