EXHIBITIONS

ロビィ・ドゥウィ・アントノ「RUMPUS」

2022.01.09 - 02.06

ロビィ・ドゥウィ・アントノ 2021 © Roby Dwi Antono Courtesy of NANZUKA

ロビィ・ドゥウィ・アントノ 2021 © Roby Dwi Antono Courtesy of NANZUKA

 ジョグジャカルタ在住のインドネシア人アーティスト、ロビィ・ドゥウィ・アントノの新作個展「RUMPUS」が、NANZUKA UNDERGROUND、NANZUKA 2G、3110NZ by LDH kitchenの都内3ヶ所で同時期開催される。

 アントノは1990年生まれ。幼少期より描くことに強い関心を示したその非凡な才能は、自由を重んじる両親のもとで、自宅の壁への落書きや、鍛職人を営む父の工房で過ごした時間などを通じて自然と育まれた。アントノの作品は、マーク・ライデンや奈良美智、ハビア・カジェハといった自身が敬愛するアーティスト、またウルトラマンや仮面ライダー、ゴジラ、ドラゴンボールなどといった日本のマンガ、映像文化からの影響を色濃く示唆する。世界中にいる絵の好きな子供に共通の「模倣」から派生した作品は、その純粋かつ知的な探求の積み重ねによって、現在も日々変化と進化を繰り返している。

 アーティストにとって、NANZUKAでの個展は今回が初めて。NANZUKA UNDERGROUND(1月9日~2月6日)およびNANZUKA 2G(1月8日〜2月6日)の個展では、オイル・チョークとオイル・パステルによるキャンバス・ペインティングとドローイングのシリーズによって構成される。

 展覧会タイトル「ランパス(大騒ぎ)」は、2010年にスパイク・ジョーンズが映画化したモーリス・センダックによる児童向け絵本『かいじゅうたちのいるところ』(1963)にインスピレーションを得たもの。アントノは、この映画のなかにある「野生の大暴れを始めよう!」という発言に着目し、この物語の一貫したテーマである「幼少期の感覚」を、自身の新作シリーズの核と位置づけた。

 いっぽう3110NZ by LDH kitchen(1月11日〜2月5日)では、単色をベースとしたスプレーペイントの肖像画シリーズを発表する。シンメトリー構図を用いて描かれた少年とも少女とも思えるその肖像は、インドネシア人としてのアーティスト自身の精神性、民族性、歴史性を静寂のなかに訴えかけているかのよう。薄らと涙を浮かべているが、そこに特定の感情を読み取ることはできず、悲壮感はなく、むしろ神々しく、崇高なオーラすら感じさせる。

「筆やオイルパステルの落書きで自分を表現することは、カタルシス」だと語るアントノ。私たちは、実直で決して奇をてらわないその作品のなかに、人類がその短くも長いその歴史において、決して絶やすことなく続けてきた文化的な営みの本質を見出すことができるだろう。