EXHIBITIONS

ARTIST FOCUS #02

平川恒太 - Cemetery 祈りのケイショウ

2022.01.02 - 02.25

平川恒太 Trinitite - シンガポール最後の日(ブギ・テマ高地) 2018 作家蔵

平川恒太 死の島(第五福竜丸) 2018 タグチ・アートコレクション

平川恒太 Black color timer 2016-17 タグチ・アートコレクション

 ジャンルや年齢を問わず、高知県立美術館の学芸員が推薦した高知ゆかりの作家を紹介する展覧会シリーズ「ARTIST FOCUS」。2020年に続く第2回として、高知県田野町出身の作家・平川恒太の個展「Cemetery 祈りのケイショウ」を開催する。

 平川は1987年生まれ。2013年東京藝術大学大学院絵画専攻修了。現在は埼玉県在住。戦争や原爆、原子力発電所事故といった人類の負の記憶を、いかに形象化し、警鐘を鳴らし、継承していくか、3つの意味を持たせるため、あえてカタカナの「ケイショウ」をテーマに掲げ、絵画を中心に様々なメディアを駆使してコンセプチュアルな制作を展開してきた。

 本展では、日本の戦後美術史において長らくタブー視されてきた「戦争画」を黒絵具だけを使って描き直した「Trinitite」をはじめ、19世紀の画家アルノルト・ベックリンや小説家の福永武彦による作品から想を得た「死の島」など、作家の代表シリーズを初公開の新作を交えて紹介する。

 歴史的な事件、または古今東西の美術・文学から引用したイメージや言葉が幾層にも重ねられた平川の作品は、多様な読み解きの可能性が開かれている。例えば、作家自らが付けた「Cemetery(墓)」を意味する展覧会名は、しばしば美術館が、作品が最終的に行き着く墓所に喩えられてきたことを想起させる。いっぽうで、墓は生者が死者を弔い、祈りを捧げる場所に違いない。美術館を墓(=祈り)の場に見立てたうえで提示される作品には、その昏さの奥に、平和を希求する思いが通底している。

 複数の解釈を呼び起こす平川の表現は、鑑賞者各々が思索を深め、自分だけの気づきをもたらすきっかけをくれるだろう。