EXHIBITIONS

村越としや「息を止めると言葉はとけるように消えていく」

2021.11.20 - 12.18

村越としや 息を止めると言葉はとけるように消えていく 2021 © Toshiya Murakoshi Courtesy of amanaTIGP

 写真家・村越としやの個展「息を止めると言葉はとけるように消えていく」がamanaTIGPで開催。本展では、2012〜21年にかけて撮影されたパノラマサイズの作品7点が展示される。なおタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは本展をもって、 「amanaTIGP」へギャラリー名を変更する。

 村越は1980年福島県須賀川市生まれ。2003年に日本写真芸術専門学校を卒業。01年から故郷福島を被写体に選び、06年以降は東京と福島を主な拠点とし、故郷で過ごした幼少期の自身の記憶をなぞるように撮影を行う。11年以降は写真のもつ記録性を重視し、風景の変化と矛盾、人々の視覚的な認識について、静謐でありながら力強い風景のなかから見出だそうと継続的に撮影を行っている。

 村越は、01年より福島県の様々な場所を継続的に訪れており、東日本大震災をきっかけに「見えている、見えていない、見ようとする、見ようとしない、とはなんなのか」を自身へ問いかけ、生まれ故郷である須賀川市を殊に撮影地としてきた。東日本大震災による津波被害や福島第一原発事故の影響は長期に及び、震災から10年が経った現在も未だ問題を抱えている。福島で生まれ育った写真家という自身のアイデンティティとこのような現状を切り離せないように感じた村越は、できるだけ見た目の変化が少なく長い時間をかけて撮影し続けることができる風景を模索し、10年という年月にわたり海と空を撮り続けている。

 今回展示される作品は、福島第一原発の南、津波の最大高度よりも高い場所に位置する展望台から撮影された膨大な作品群の一部である、長閑やかな海景だ。本展と同様パノラマサイズの作品を展示した過去の個展「沈黙の中身はすべて言葉だった」で、震災後の福島を撮影した自身の胸中を写真で語りかけた村越。それから5年、意図や作為を排した不変の視点で故郷の海をじっと見つめ続けた村越の姿勢は、経験や出来事に基づき生まれる「言葉」を作品から切り離し、ただひとつの事実として映る福島の風景のとらえ方を、鑑賞者に委ねているように感じられる。