EXHIBITIONS

クレイグ・クチア「act(ive) enclosure」

クレイグ・クチア absent landscape 2021

クレイグ・クチア making the moon 2021

クレイグ・クチア 1975 2021

  MAKI Galleryでは、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、クレイグ・クチアの日本初個展「act(ive)enclosure」を表参道のギャラリースペースで開催する。

 クチアは1975年オハイオ州クリーブランド生まれ、99年にオハイオ州クリーブランド美術大学で美術学士号を取得後、2003年にロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アーツにて美術学のポストグラデュエート・ディプロマを取得した。

 クチアは制作において、シュルレアリスムやパターン・アンド・デコレーション、キュビズムなどの歴史的芸術運動を参照すると同時に、自身の経験からもインスピレーションを得てきた。代表的なクジラのシリーズには、マッコウクジラや動植物などの普遍的になじみのある形象がモチーフとして登場し、クチアの空想的なペインティングに寓話的で比喩的な響きをもたらす。また様々な主題において、平坦でグラフィックなタッチから素材感豊かなインパストまで幅広い技法を併用することで、作家は油絵の可能性を探求している。

 本展では、鑑賞者に錯覚をもたらす室内画と新シリーズの風景画を含む新作15点を展示。例えば、閉ざされた窓を通ってケーブルからぶら下がる、明るく灯った電球が少しいびつな月の模型の上に置かれた《making the moon》では、窓は月の模型の上に乗っているようにも見え、論理的に不可能な構成でキャンバス自体の平坦さに注意を向けるよう促す。

 いっぽう最新シリーズでは、海に浮かぶ巨大なイカのモチーフを通して油彩画の可能性を探求する。鮮やかな色を使用しながら、ユーモラスかつ子供らしく描かれたイカの姿は、一見遊び心あふれる技術演習のように見えるが、比喩的表現が豊かなクチアの作品は、軽快な描写を超えて私たちの住む世界における私たち自身の説明責任を追及している。

 作家は、「前回のシリーズで登場したマッコウクジラやオオハシのように、イカのイメージは文化的シンボルとして馴染みがあります。その姿は私たちによって認識され、作り上げたアイデンティティを与えられていますが、正体についてはほとんど理解されていません。人間として私たちは長い間周りの世界から切り離され、実際に生きて呼吸する生物よりもカートゥーン・アバターの方が馴染み深く、その分裂は加速する一方です。そのためこのイカはある意味イカそのものではなく、私たちの想像上のイカを象徴しています」と語っている。

 典型的な図像と技術的なトリックを用いたクチアの示唆に富むそれぞれの絵画には、単一にとどまらず多面的な物語が組み込まれている。階層化されたレファレンスと比喩は鑑賞者個人の体験を振り返らせ、視野を広げるよう促し、最終的に世界に対する私たちの責任への気づきをもらたらす。