EXHIBITIONS

開館55周年記念特別展

奥村土牛

―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―

2021.11.13 - 2022.01.23

奥村土牛 醍醐 1972(昭和47) 山種美術館蔵

奥村土牛 鳴門 1959(昭和34) 山種美術館蔵

奥村土牛 枇杷と少女 1930(昭和5) 山種美術館蔵

奥村土牛 鹿 1968(昭和43) 山種美術館蔵

奥村土牛 雪の山 1946(昭和21) 山種美術館蔵

奥村土牛から山﨑種二宛書簡(牛) 20世紀(昭和時代) 山種美術館蔵

 山種美術館が開館55周年記念特別展「奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」を開催。同館がその代表作を多数所蔵している日本画家・奥村土牛(おくむら・とぎゅう、1889〜1990)を紹介する。

 山種美術館の創立者・山﨑種二(1893〜1983)は、「絵は人柄である」という信念のもと、同時代の画家と直接交流しながら作品を蒐集した。とくに土牛とは親交が深く、画業初期の頃から「私は将来性のあると確信する人の絵しか買わない」と画家本人に伝え、その才能を見出して支援し、約半世紀にわたり家族ぐるみの交際を続けた。現在、同館は135点におよぶ屈指の土牛コレクションで知られている。

 土牛は、画家志望であった父親のもとで10代から絵画に親しみ、16歳で梶田半古(かじた・はんこ、1870〜1917)の画塾に入門、生涯の師と仰ぐ小林古径 (こばやし・こけい、1883〜1957)に出会った。38歳で院展初入選と遅咲きでありながら、展覧会に出品を重ねて40代半ばから名声を高めるとともに、美術大学で後進の指導にもあたり、101年におよぶ生涯を通じて制作に取り組んだ。

 土牛という雅号は、「土牛石田を耕す」の中国・唐の詩から父親が名付けたもの。その名の通り、地道に画業へ専心して、師から学んだ写生や画品を重視する姿勢を貫き、80歳を超えてなお「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」「芸術に完成はあり得ない」「どこまで大きく未完成で終わるかである」と語って、精進を重ねた。

 本展では、瀬戸内海の鳴門の渦潮を描いた《鳴門》や、古径を偲んで制作した《浄心》《醍醐》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展の出品作を中心に、土牛の画業をたどる。

「絵を通して伝わってくるのは作者の人間性」という自らの言葉を体現するような作品を数多く生み出した土牛。近代・現代を代表する日本画家として、いまなお人々に愛されている土牛芸術の魅力を、画家の人間性が表れた温かみのある作品を堪能してほしい。