EXHIBITIONS

李鎮雨展

2021.11.04 - 12.25

李鎮雨 無題 2020-21

 東京画廊+BTAPでは、ソウル出身のアーティスト・李鎮雨(Lee JinWoo)の個展を開催している。12月25日まで。

 李は1959年生まれ。83年に韓国の世宗大学を卒業後、86年に渡仏し、パリ第8大学造形美術学ならびにパリ国立高等美術大学(材料学研究)を卒業した。現在はパリを拠点に活動。パリ留学中にイタリアのストロンボーリ島で火山の噴火を偶然目撃し、衝撃を受けた李は、その時の火山灰を持ち帰り、それをモチーフとした作品の制作をいまも続けている。李の作品はフランスのパリ市立セルヌスキ美術館に収蔵されており、2015〜16年に同館で開催された「Séoul-Paris-Séoul」展、18年には「Escale coréenne」展で展示された。

 李の作品の特徴は表面の質感と、その質感のもたらす黙想的な情緒であり、それは独特の制作法によって生み出されている。韓紙をキャンバスとして用い、その上に炭を乗せ、さらに韓紙を置いた後、表面を鉄のブラシで繰り返し叩いたり、引っ掻いたりする。この鉄ブラシの作業によって、画面には多様な質感の変化がもたらされる。砕かれて韓紙に染み込んだ炭のかたちと、また少ない時には数枚、多い時には数十枚まで重ねられた韓紙によって、凹凸のあるモノクロームの画面がつくり出される。

 李によれば、このような作業は誠実な労働であり、自身に内在する「何か」を、「頭」または「脳」の介在なしに表出するための手段だと言う。概念や思考の干渉を防ぐために、強度のある労働の繰り返しが必要とされる。

 本展は2017年の日本初個展以来、同ギャラリーでは4年ぶりの展示。200号の大作を含め、新作14点を発表する。