EXHIBITIONS
FACES
磯谷博史、岡田理、エレナ・トゥタッチコワ、蓮沼執太
SCAI PIRAMIDEでは、グループ展「FACES」を開催。磯谷博史、岡田理 、エレナ・トゥタッチコワ、蓮沼執太のアーティスト4名が参加する。
本展は、2020年春に神奈川県立近代美術館葉山館で予定されていた音楽イベントと展覧会「MUSIC TODAY HAYAMA / FACES」の構想から企画されたもの。パンデミックの影響により「MUSIC TODAY HAYAMA / FACES」が中止となった後にも作家たちによる再考が重ねられ、ポストカードや書簡の往信を通じ、遠隔の対話をつなぐダイアログの場としてあり続けてきた。そこには、コラボラティブな設計と即興的な仕草が、巧みに織り込まれている。
生活のなかに「音」が生まれる成り立ちや意味を、環境の条件を用いて表す蓮沼執太。新作インスタレーション《FACES》(2021)では、楽器の製造過程で排出されるブラス(真鍮)の破片で構成され、素材の接触が音を生む状況を再構築する。壁一面に、金色の鋭い輝きを見せる金属の破片と、楽器として期待された音を持たない断片が接触し合うことで、素材そのものの音を回復する本作は、音の造形的な側面を想起させながら人間がつくる環境とその外側に目を向ける。
被写体とそこに付随する音への介入は、磯谷博史の写真作品《物音を連れて》(2019〜2021)に引き継がれる。磯谷はこれまでも、iPhoneで撮影した風景など、自らの生活圏から拾い上げた身近な素材で、鋭い状況の構成と知的パズルを生み出してきた。今作《物音を連れて》で提示されたイメージは、そこにあったはずの音を、鑑賞者の記憶、または空想の領域で再生しようと働きかける。
エレナ・トゥタッチコワは、歩き続けることで、世界の認識を新たにしていく。手書きのマップやドローイング、写真、映像によるインスタレーションが描き出すのは、今年の夏に行ったある少年との旅。自らの存在を確かめ、両足を地面に接して、身体的な制限や速度のなかで続ける営みの過程に、ふたりがそれぞれに理解し共有した新しい土地の体験がある。この時、歩行は、時間と空間を同時に把握し、思考と想像を導く総合的なメディアとなり、ものごとが接触し関係を結ぶ本展のテーマに、地理的な広がりと音楽的なリズムを与えていく。
岡田理は、磁土から丹念に練り上げたセラミック彫刻で、出会いとつながりを深める複雑な主題「FACES」に応える。植物や珊瑚、指先やロープなど象徴的な記号が混ざり合うユーモラスな彫刻群は、現実と夢を飲み込むような静かな力で象られている。有機的で奇異なフォルム、色彩、艶のある豊かな表情は、孵化したばかりの生体のように真新しい出会いとなって鑑賞者の前にたち現れ、見ることを迫る。
ささやかな未知との接触や邂逅。本展は、そうした日常の認識に取りこぼされた発見に共鳴し、多様な理解のプロセスとなる遊びの領域を取り戻そうと試みる。
本展は、2020年春に神奈川県立近代美術館葉山館で予定されていた音楽イベントと展覧会「MUSIC TODAY HAYAMA / FACES」の構想から企画されたもの。パンデミックの影響により「MUSIC TODAY HAYAMA / FACES」が中止となった後にも作家たちによる再考が重ねられ、ポストカードや書簡の往信を通じ、遠隔の対話をつなぐダイアログの場としてあり続けてきた。そこには、コラボラティブな設計と即興的な仕草が、巧みに織り込まれている。
生活のなかに「音」が生まれる成り立ちや意味を、環境の条件を用いて表す蓮沼執太。新作インスタレーション《FACES》(2021)では、楽器の製造過程で排出されるブラス(真鍮)の破片で構成され、素材の接触が音を生む状況を再構築する。壁一面に、金色の鋭い輝きを見せる金属の破片と、楽器として期待された音を持たない断片が接触し合うことで、素材そのものの音を回復する本作は、音の造形的な側面を想起させながら人間がつくる環境とその外側に目を向ける。
被写体とそこに付随する音への介入は、磯谷博史の写真作品《物音を連れて》(2019〜2021)に引き継がれる。磯谷はこれまでも、iPhoneで撮影した風景など、自らの生活圏から拾い上げた身近な素材で、鋭い状況の構成と知的パズルを生み出してきた。今作《物音を連れて》で提示されたイメージは、そこにあったはずの音を、鑑賞者の記憶、または空想の領域で再生しようと働きかける。
エレナ・トゥタッチコワは、歩き続けることで、世界の認識を新たにしていく。手書きのマップやドローイング、写真、映像によるインスタレーションが描き出すのは、今年の夏に行ったある少年との旅。自らの存在を確かめ、両足を地面に接して、身体的な制限や速度のなかで続ける営みの過程に、ふたりがそれぞれに理解し共有した新しい土地の体験がある。この時、歩行は、時間と空間を同時に把握し、思考と想像を導く総合的なメディアとなり、ものごとが接触し関係を結ぶ本展のテーマに、地理的な広がりと音楽的なリズムを与えていく。
岡田理は、磁土から丹念に練り上げたセラミック彫刻で、出会いとつながりを深める複雑な主題「FACES」に応える。植物や珊瑚、指先やロープなど象徴的な記号が混ざり合うユーモラスな彫刻群は、現実と夢を飲み込むような静かな力で象られている。有機的で奇異なフォルム、色彩、艶のある豊かな表情は、孵化したばかりの生体のように真新しい出会いとなって鑑賞者の前にたち現れ、見ることを迫る。
ささやかな未知との接触や邂逅。本展は、そうした日常の認識に取りこぼされた発見に共鳴し、多様な理解のプロセスとなる遊びの領域を取り戻そうと試みる。